■ダンス・ウィズ・キッズ~親として育つために私が考えたこと

井上 香
(いのうえ・かおり)


神戸生まれ。大阪のベッドタウン育ち。シンガポール、ニューヨーク、サンフランシスコ郊外シリコンバレーと流れて、湘南の地にやっと落ち着く。人間2女、犬1雄の母。モットーは「充実した楽しい人生をのうのうと生きよう」!


第3回:プレイグループ
更新日2001/04/24 

<前回から続く>

マザーズクラブと呼ばれるものは、このベイエリアでは各市に一つはあるようだ。ただ、このサンカルロス・マザーズクラブは、他の市のクラブと比べても活動内容が充実していて、活発なクラブであるようだった。その活動の中で、恐らくこのクラブのメンバーになった人のほとんどが利用するのは、「プレイグループ」である。「プレイグループ」とは、ほぼ同じ年齢の子ども達を一緒に遊ばせるためのグループで、クラブメンバーの中で自発的に作られる。

新しいメンバーを募集しているプレイグループは、その旨をプレイグループ・オーガナイザーに伝えておく。新しく会員になった人がどこかのプレイグループに参加したいと思うと、そのオーガナイザーに電話をかけると、その子どもの年齢によってオーガナイザーがリストから適当なグループを紹介してくれるのである。

早速、私もプレイグループオーガナイザーに電話をかけた。そこで紹介して貰ったのが、できてたばかりと言う1歳児のプレイグループ「プレイグラウンド・パルズ」(公園友だち、と言うような意味)だった。

このプレイグループに参加できたことが、私の4年弱にわたるカリフォルニアでの生活をよりいっそう充実した楽しいものにしてくれた。このグループのメンバーは、みんな普通のアメリカの母親である。彼女たちと子育ての悩みや、子どもの叱り方に始まり、家事の手の抜き方、簡単でおいしい料理のレシピ、果ては夫の家族とのつきあい方(平たく言うと嫁姑の関係)、そして愚痴にいたるまで本当によく話した。そうやって、少なくとも週に一度、彼女たちに会って一緒に子供を遊ばせながら話をしたことが私に多くのことを教えてくれた。

私にとっては、民主主義の旗手、自由の国、アメリカンドリームの国、個人主義、平等主義、何かにつけ日本人が我が身と比較して羨望の的に置く国、あるいは必要以上に自らを卑下するか、必要以上に相手を蔑むか、感情的に両極端な対象の国アメリカ。アメリカ人の友だちにとっては、ソニー、スシ、テンプラ、みんなが深々と礼をして何だかとっても礼儀正しい国、名前はよく聞くけどどんなところかははっきりわからない国、(ついでに地球上のどこにあるかもはっきりとは知らない国)日本。でも、子どもが遊ぶ公園の砂場での長い長い井戸端会議の末、でた結論。

「なんだ?、同じじゃん!」

子どもが言うことを聞かない、どうやって叱ればいいのか、効果的な叱り方がわからない、自分の子どもが友だちを叩いちゃった、些細なことで子どもの友だちのお母さんを怒らせてしまった…どうしたらいいの?! ──みんな同じことで悩んでいるのだ。 ただ、悩みは同じでも、その解決のための手段や思考プロセスにはずいぶんと違いがあるのだけれど。

 

→ 第4回:最初の日々