■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』


第1回:ベトナム・ホーチミン
第2回:中国・大連
第3回:フィリピン・セブ島
第4回: ネパール・カトマンズ
第5回: メキシコ、オーストラリア
第6回: パキスタン・ギルギット
第7回: 戦争を知りたい女子大生
第8回:悪夢のハンガリー・スロヴェニア徒歩越境
第9回:今時の卒業旅行者たち
第10回:冬の欧州、貧乏旅行者は辛いよ
第11回:天国に一番近い島
第12回:ベトナム、シクロ物語





■更新予定日:毎週木曜日

第13回:バリ島のジゴロたち

更新日2002/06/13


"バリ島といえばジゴロ"と言えるほど、すっかり有名になったバリ人のサクセス手段。日本人女性を狙い撃ちするジゴロはなにもバリ島に限ったことではない。タイのジゴロも有名なものの、バリ島ジゴロはタイとは違って極めて組織的。ジゴログループはいくつも存在して、ネットワークを形成している。

バリ島デンパサールにある日本領事館には、日本女性からの結婚・離婚をめぐる問い合わせや相談がひっきりなし。
「領事館は結婚相談所ではありません。初めのうちはケースによって"個人的"に応対していたのですが、あまりの多さに今では止めています。一番困るのは、騙されている事実がはっきりしているのに、本人にはその自覚がまったくないこと」。

現地で日本料理店を経営している日本人女性も同じようなことを言っている。
「女性のお客さんたちからバリ人男性との恋愛相談を多く受けます。すべてがそうだとは言いませんが、ほとんどはジゴロに騙されているだけ。最悪なのは、さんざんお金を取られた後になっても、愛だの何だのと言って相手を信じている女性がいるのにはびっくり。日本人って本当に平和ですよね。ただ最近ではジゴロも有名になったので、ジゴロを逆に利用するたくましい日本人女性も多いですよ」。

街をウロウロしているとジゴロたちとも顔見知りもなる。腹を割って話をすると彼らたちの必死の姿も見えてくる。

「日本人の女の子と結婚するのが、俺たちの唯一のサクセス手段さ。手っ取り早いし、遊びながら楽しめるし一石二鳥。結婚して家を買ってもらうのが一番の目的。買ってもらった後はもちろんバイバイ。ここでは日本人の名前で土地を買えないから、離婚して家を売れば大金が入るんだ。1万円でも大金なのに、何百万円も稼げるんだぜ。裁判するって騒ぐ女性もいるけど無駄なだけ。法律はインドネシア人のためにあるし、結婚するなら同じ肌の色をした女性がいいに決まっている。良いも悪いもないさ、俺たちにとってこれは仕事なんだから…」。

バリ島ジゴロはバリ人ばかりではない。日本人が集まるバリ島で稼ごうとやってくるジャワ人たちも多く、ジャワ人ジゴロとバリ人ジゴロの間でのトラブルもあったりする。またそれぞれがグループ化し、複雑に絡み合ってネットワーク化しているのが大きな特徴になっている。

「属していたグループから今度独立してボスになるんだ。バリ島には小さなグループなら200以上はあるかな。皆で情報交換しているから、どの宿に泊っているとか、誰と知り合いだとかすぐに分かるよ。ところで新しいグループには新人が10人ほどいるから、ナンパのための日本語をみんなに教えてくれないか。もちろん、みんな真剣さ。何故って、これが職業だし、夢なんだから…」。

街には欧米人女性と歩いているジゴロたちを目にすることがある。若い女性もいれば、ミドル世代の女性もいる。ただ欧米人女性の場合は、一緒に歩いていても必ず数メートル離れて、使用人のような感じで接している場合もあるのが印象的。

それに対して日本人女性の場合は、とってもフレンドリーでべったり状態。ジゴロたちが日本人に群がるのはそんな背景があるのかも…。

 

→ 第14回:ベトナム、路地裏カフェ物語