■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』


第1回:ベトナム・ホーチミン
第2回:中国・大連
第3回:フィリピン・セブ島
第4回: ネパール・カトマンズ
第5回: メキシコ、オーストラリア
第6回: パキスタン・ギルギット
第7回: 戦争を知りたい女子大生
第8回:悪夢のハンガリー・スロヴェニア徒歩越境
第9回:今時の卒業旅行者たち





■更新予定日:毎週木曜日

第10回: 冬の欧州、貧乏旅行者は辛いよ

更新日2002/05/23


冬の欧州への貧乏旅行のメリットといえば、何といっても格安航空券がさらに安いこと。短期ならば4万円代、1ヶ月以上有効のチケットでも5万円台で見つかる。但し、安く旅行しようと思うと重くのしかかるのが宿泊代金。アジアならば、数ドル程度で安宿が簡単に見つかるものの、ヨーロッパはそうもいかない。

冬の欧州では、30~50%オフの冬期料金で泊れることもあるものの、安いユースホステルや地方の安宿などは冬期休業している場合も多い。このため結果的に予定になかった高いホテルに泊らざるを得ない場合も出てきたりする。

最近訪れたアドリア海も、夏は欧州各国からのリゾート客で溢れるものの、冬になると事情が一変。クロアチアのアドリア海沿岸部では、ドブロクニクやスプリットといった有名観光地は別にして、小さな漁村や島々の安い宿泊施設はすべてクローズド。ツーリストインフォメーションすら開いていない。と言っても、事前に現地観光局で情報を仕入れることができたため、無駄足を運ぶことは避けられた。

しかし、実際に訪れて安宿が見つからなかった場合はとっても悲惨。安宿を求めて移動を重ねることになる。スロヴェニアの小さな港町・ピランでは、貧乏旅行者の悲しさ?を味わった。

ピランは、年々訪れる観光客が増加している穴場的な街。ピランに着くと、とりあえず安いプライベートルームを紹介してくれる観光案内所へ。ところが、冬は休業で閉まっている。近くにあるプライベートルームを斡旋している旅行会社に行くと、「冬はどこも休業している」とつれない返事。街を歩いている人もチラホラ状態、閑散としている。しょうがないのでバスターミナルまで戻ることにする。

途中、派出所があったので覗いてみると警察官が居眠り。物音で起きた警察官は、東洋人のツーリストにびっくり。
「なんで冬にピランに来るんだ。冬はこの街は眠っているんだ。バスで15分ほど行くと
プエルトローチェというリゾート地があるから、そこなら観光客がいるぞ」。

そう聞いて、ミニバスをかなりの時間待って訪ねてみると、確かに観光客はいた。しかし高い高級ホテルばかりで、安宿などとんでもない様子。再びピランに戻って時刻表を見ると、まだバスがあるのはイタリアのトリエステ行きのみ。しかも発車時間ぎりぎりだったので、考える時間もなく飛び乗った。

イタリアのトリエステ。地図では知っていたものの、予備知識は全くない。小さな街であることを期待していると、その希望は見事に裏切られた。トリエステはアドリア海沿岸の大きな街で、とても安宿などありそうにない。念のため、隣の鉄道駅のツーリストインフォメーションに行くと、またもやつれない返事。
「プライベートルームはないねえ。あっても夜の9時だから探すのは無理だよ。ユースホステルもあるけど、かなり遠いよ。バスで30分ぐらいかな、冬は閉まっているかもしれない。安いホテルは50ユーロぐらいだったらあるけど…」。

50ユーロと言われても、宿泊予算一泊10ユーロ以内の貧乏旅行者にとってはかなり痛い。前日も移動で寝ていないので、ウロウロする気力もない。結局、夜中の列車でスロヴェニアのリュブリャーナに行くことにした。着くのは朝の4時、プライベートルームを紹介してくれる観光案内所はまだ空いていない。

筋書きのない旅行は楽しいものの、安宿が見つからない貧乏旅行者は辛い……。

「海外移住情報」東欧写真集
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/eep.html

 

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