■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』




第51回:パキスタンの女性たち
第50回:タイ、カオサンとパタヤの関係
第49回:マレーシアの避暑地、キャメロンハイランド
第48回:モロッコの女性たち
第47回:インドネシア、素朴なロンボク島
第46回:ルーマニアのドタバタ劇
第45回:エストニアの日本料理店
第44回:ギリシア、アテネのさんざんな一日
第43回:ロシア、モスクワ空港警察官の小遣い稼ぎ
第42回:メキシコシティのナイフ強盗
第41回:オーストラリア、ゴールドコーストのツアーガイド裏話
第40回:インド、ダージリンのイメージと現実
第39回:中国、大連の国家安全局員
第38回:キューバ、ドルの威力
第37回:チリ、イースター島の日本伝説
第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子






■更新予定日:毎週木曜日

最終回:フィリピン、エルミタ地区の横顔

更新日2003/03/20

フィリピンといえば、今ではボラカイ島やエルニド、セブなど海洋リゾート地として身近な存在になっているものの、一昔前は治安の悪いイメージが常につきまとっていた。中でも首都マニラのエルミタ地区は、すこぶる評判の悪い地区として有名だった。

エルミタ地区はゴーゴーバーなどが建ち並ぶ歓楽街で有名だったものの、マルコス政権が滅亡してからは、ゴーゴーバーなどを一掃。クリーンな街づくりを推進した。その結果、今ではエルミタ地区の一角を占めるマラテ近辺は、トレンディ・ストリートと呼ばれるほど、若者向けの洒落た店などが集まるエリアに生まれ変わっている。

しかし、エルミタ地区が危険とは無縁の地区になったかといえば、答えはノーとしかいいようがない。怪しいネオンは一掃されたものの、相変わらず魑魅魍魎(ちみもうりょう)が出没する。

エルミタの中心にあるロビンソン・デパート。市民で賑わう店内に腰を下ろし、行き交う人などをウォッチングしていると、いろんな光景が見えてくる。

ひっきりなしに携帯電話している一目でその筋と分かる日本人。若いフィリピン女性を同伴している日本人グループ。そんなことをしているのは中高年男性だけかと思っていると、若いフィリピン男性と手を組みながら楽しそうにショッピングしている、日本人の中高年女性もいたりする。

慣れてくると、日本人男性を物色している二人組のフィリピン女性グループの存在も目に入ってくる。それも一組や二組ではなく、軽く10組以上はいる。偶然出会ったように日本人に近づいては、ボッタクリバーなどに連れて行ったり、睡眠薬強盗を働いたりするのが目的だったりする。

そんな女性たちの誘惑をかいくぐるのは簡単なものの、困るのはエルミタ周辺にたむろする客引きや物売りたちだ。彼らたちは、他の国の客引きたちと明らかに違う。人相も悪くて、しつこくつきまとう。愛嬌もなければ、駆け引きもない。離れないので走って逃げると後を追いかけてくる者もいる。

そんな時は、とりあえず近くの店に飛び込んで助けを求めるのが得策なものの、タチの悪いのになると、出てくるのを待ち伏せしている場合もあったりする。

また、人がいないのを確認すると、強盗に変身したりする場合も珍しくない。比較的安全なマラテ周辺でも、油断していると被害に遭うこともある。

ある夜、何気なく歩いていると、物売りが急にぶつかってきて商品をわざと落とす。とっさにその場を離れたためにトラブルは避けられたものの、宿のスタッフからは、「あなたはラッキー!」と言われた。

「この宿に泊っていた日本人女性は、取り囲まれてバッグを持ち去られた。警察が取り締まってもらっても、そのうちまた始める。外国人がこの街にいる限り、なくならないと思うよ。豊かな外国人から巻き上げることに、罪の意識は全然ないんだから。困った問題だけどね……」

そんなエルミタ地区では、歩くのも嫌になったりする時があるものの、バックパッカー向けの安宿があるのはエルミタ地区だけだからしょうがないのだ……。

 

 

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