■My Bangkok Life〜暮らしてわかったマイペンライの国

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。



第1回:イントロダクション〜バンコクとの出会い
第2回:住んでみる―意外と快適な住宅事情
第3回:食べてみる・前編―辛い料理は好まれない?
第4回:食べてみる・後編―屋台料理をエンジョイしよう
第5回:移動する・前編―陸の救世主はバイクタクシー
第6回:移動する・後編―渋滞知らずの水上交通
第7回:着てみる―足長スレンダーVS胴長短足
第8回:買い物をする―タイ人も敬遠する“メイド・イン・タイランド”
第9回:読んでみる―エロ・グロ・スプラッターな大衆新聞
第10回:テレビを見る―大衆娯楽の連続ドラマ
第11回:話してみる―同じ土俵でコミュニケート
第12回:タイ人を知る―タイを語る二大キーワード
第13回:仕事をする―これであなたもタイが嫌いになる


■更新予定日:毎週木曜日

第14回:タイは日本をこう見てる・日本食ブームの裏側

更新日2002/12/05


国の発展度合いと国民の健康への関心度は正比例すると思っている。貧困にあえぎ、毎日生活していくのが精一杯の人が大多数を占める国は、自分たちの健康に関心を払えるはずがない。病気になっても治療を受けられないことさえある。

逆に日本のように物質的に充分満たされている国は、健康に気を遣わない人は現代人ではないような扱いをされる。食品はとかく効能を強調し、メディアはカラダにいいことをひたすら取り上げ、国民総健康へと煽られるかのようだ。

ワタシのイメージの中のタイはどちらかというとまだ発展途上で、健康なんてことに気を遣う人も、そういうことを説く人も少数派だと思っていた。なにより、タイ人はそういうちまちましたことを気にするような国民に見えなかったのである。


バンコク国際空港内の寿司バー

ところが。この2〜3年の間に、健康になりたいタイ人が密かに増殖していたらしい。無農薬野菜が一般のスーパーに出回り、化学調味料が公然と敬遠され、効能を謳った食品も発売されるようになった。まずは口にするものから、ということか。

日本人が長寿なためか、日本食はカラダにいい料理として知られていたところに、この健康ブームがうまくかみ合って、バンコクの巷には日本食を食べさせる店が急増した。

そもそも、タイの日本食屋は2種類に分けられる。日本人向けの店と、タイ人向けの店だ。日本人向けの店は在住している日本人を対象にしていて、メニューも日本語しかないところも多い。タイ人向けの店はファミリーレストランの日本食版といったカンジだ。

急増したのはこのタイ人向けの店で、掘りごたつ風座敷あり、回転寿司屋あり、ラーメン屋ありといった具合だ。しかしこの数年の中で、一番めざましい発展を遂げたのは、チェーン展開している「おいしい(OISHI)」だろう。

「おいしい(OISHI)」はビュッフェ形式の日本食レストランだ。1つの料理を皆で取り分けて食べるタイ人は、日本食屋に行ってもこのスタイルで食事をする。天ぷら定食、刺身、お好み焼き、手巻き寿司セット……と注文して、それを仲間内で少しずつ取り分けて食べる。

そういったタイ人独特の食事スタイルに注目し、「いろんな料理をちょっとずつ、でも満腹になるまで」というコンセプトの元に作られたのが、この「おいしい(OISHI)」である。料金は夕食時で1人当たり500バーツ(約1,500円)と、タイの物価を考えれば決して安くなく、むしろ割高なのだが、日曜などは昼間から行列ができているところもあるくらいだ。

500バーツ取るだけあって、さすがにメニューは充実している。刺身、寿司、オードブル風、居酒屋風、しゃぶしゃぶ、すき焼き、お好み焼き、餃子、鉄板焼き、天ぷら、うどん、蕎麦。なぜか椎茸の入った土瓶蒸しまである。デザートもアイスクリーム、ケーキ、フルーツはもちろん、小豆ぜんざい、中華風みつ豆など食べ放題。

しかし、慣れない手つきで箸を持ちながら、嬉々として寿司を皿に取るタイ人を横目で見ながら、ワタシはちょっとげんなりしてしまう。この人たちは本当にカラダにいいから日本食を食べてるんだろうか。それともただのスノッブ気取り?

すごく勝手なことを言わせてもらえば、寿司を見て、「うえっ、生の魚なんて食べられないよ」と言ってくれるタイ人の方が、いかにもタイ人らしくてワタシは好きだ。それを、「わさびをいっぱいつけるとおいしいよね」と言われると調子が狂ってしまう。タイ人の味覚が頑固で保守的だったのは、20世紀までの話だったのか。

そんなワタシの心の内を知る由もなく、前出の「おいしい(OISHI)」はあれよあれよというまに事業を拡大し、テイクアウト専門の寿司バーまでをも出店し始めた。スーパーの閉店間際になると惣菜の類を値下げするのは、タイでも日本でも同じである。サーモン丼の容器を持ちながら、「50バーツ引きだからこれにしようか?」と夫に訊ねる妻。このワンシーンがバンコクだなんて、一体誰が信じるんだろう。

 

 

第15回:タイは日本をこう見てる・Jコミックの浸透度

 
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