第13回:仕事をする―これであなたもタイが嫌いになる
更新日2002/11/28
自称タイフリークの人でも。タイ人の温かさが大好きな人でも。タイ人と一緒に仕事をするようになれば、タイ人が、ひいてはタイのことがいっぺんで嫌いになってしまう。これは在タイ外国人の間ではよく知られていることである。不文律といってもいいかもしれない。
なにしろ、“マイペンライ”と懐の大きさを見せてくれた人が、日々の生活は“サバーイ”であるべきと教えてくれた人が、仕事仲間となった場合はそれがことごとくマイナスに出てしまうからである。加えて、日本の常識といったものを振りかざしても、彼らにはなんのことかさっぱりわからないとくる。
約束の時間は守らない。遅れてきても謝らない。予定を立てて物事を遂行できない。上司の指示や判断を仰がずに物事を判断する。ミスを指摘されるとまず言い訳する。ちょっとした時間を盗んですぐ私用電話をする。遅刻してきても終業時刻ぴったりには風のようにいなくなる……。
職場のごく数人がこれなら仕方がないとまだ目をつぶることもできるが、外国人の働く職場は外国人自体が少数派だ。タイ人が大多数なのである。大多数のうちのほぼ全員がこうだったら、どんなに寛容な人でもフチ切れてしまって当然である。

カオサン通り
しかし、ブチ切れてそれを面前でがなり立ててしまうと、仕事は半人前でもプライドは一人前以上の彼らはぷいと仕事を辞めてしまったりする。連絡なしで数日欠勤するならまだいい方だ。鬱陶しいことは我慢しないで回避するに限る。彼らがこの職場は“サバーイ”でないと判断した結果なのだから。
だからタイ人社会では、転職した回数が多くてもさほどマイナス材料にはならない。タイ人が飽きっぽいというのは、タイ人自身が一番よく知っていることだからだ。ちゃっかりしている人は転職の度に給料をアップさせ、実力以上の金額を手にしている人もたくさんいる。
日系企業であれば、日本的マネジメントというものを押し付けることも可能だが、上司や管理者となる日本人が常にタイ人従業員にがみがみ言ったり、ぐちぐち言ったりしているところがほとんどだ。規則をがんじがらめにしてもそれを殊勝に守るようなタイ人ではないし、ふと気を抜くと彼らの持つDNAがタイ人本来の姿に軌道修正を図るからである。
タイ人本来の姿とは。その昔「田に米あり、水に魚あり」と詠われた肥沃な土地では、あくせく農耕しなくても充分に食べていくことができた。更に、熱帯の気候は人を怠惰に緩慢にする。ゆるりとした時の流れに身を任せて、のんびりと享楽的に生きてきたのが彼らの本来の姿だと思っている。日本人とは根本的に違うのだ。
こんなに嫌悪感を持っている仕事振りのタイ人でも、タイに住んでいない外国人がそれを揶揄すると、たちまち自分たちはタイ人の味方になってしまうから不思議だ。自分たちがタイに住んでいるゆえの同胞意識というものなのだろうか。
手際が悪い。仕事が遅すぎる。指示を出してもすぐに動かない。自分もかつて同じことでイライラさせられたはずなのに、「タイ人は日本人とは違いますから」などとかばったりさえする。決してタイ人にいいところを見せたいと見栄からではなく、純粋な気持ちで弁解してあげているのだからおかしな話だ。
それは多分、まだタイ人を100%見放してはいないからだろう。そう、嫌い嫌いも好きのうち、なのだ。いくら憎まれ口を叩いても、何度ムカつかされても、それでもワタシたちはタイに住み続けている。
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