■My Bangkok Life〜暮らしてわかったマイペンライの国

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。



第1回:イントロダクション〜バンコクとの出会い
第2回:住んでみる―意外と快適な住宅事情
第3回:食べてみる・前編―辛い料理は好まれない?
第4回:食べてみる・後編―屋台料理をエンジョイしよう
第5回:移動する・前編―陸の救世主はバイクタクシー
第6回:移動する・後編―渋滞知らずの水上交通
第7回:着てみる―足長スレンダーVS胴長短足
第8回:買い物をする―タイ人も敬遠する“メイド・イン・タイランド”
第9回:読んでみる―エロ・グロ・スプラッターな大衆新聞


■更新予定日:毎週木曜日

第10回:テレビを見る―大衆娯楽の連続ドラマ

更新日2002/11/07


テレビが身近な娯楽なのは、タイでも日本でも変わらない。ワタシもアパートの契約を決めたその日に、冷蔵庫と14インチのテレビを購入した。そのときはもちろんテレビの中のタイ語が聴き取れるはずもなかったのだが、すでにタイに住んでいた知り合いから、「テレビは買った方がいい。最初は何を言っているかわからなくても、それを聴くことが勉強になるから。」と言われていたので、素直にその言葉に従った。

しかし、毎日MTVとタイの音楽番組ばかり見ていたワタシには勉強になるはずもなかった。聴き取れないニュースや、ストーリー展開が把握できないドラマを見るのはプラスの退屈でしかない。そんなワケで、冷蔵庫の上に鎮座したテレビは完全に画が見られるステレオと化していた。

それでも半年を過ぎた頃から、なんとなくドラマを見るようになった。いや、正確に言えば、“見る”のではなくて“眺める”だったと思う。それは主役の俳優が自分好みの顔をしているとか、たまたまチャンネルを合わせたときの場面が面白そうだったからとか、実に他愛もない理由からだった。

タイには全部で5つの民放局がある。そしてゴールデンタイムには、そのほとんどの局で連続ドラマを流す。日本の連続ドラマは週1回の放映だが、タイでは、月・火、水・木、金・土・日と週に2日以上続けて放映される。しかも1回の放映時間は約2時間と、火曜サスペンス劇場並みだ。

とはいっても、その2時間の間にめまぐるしい展開があるワケではなく、だらだらのたのたと話は進んでいく。日本でなら、編集でコンパクトに凝縮されているものが、長回しでつなげられているだけに過ぎないからだ。だから1回くらい見逃しても、つじつまが合わなくなることはまずない。


連続テレビドラマのワンシーン

テレビドラマのテーマとして一番多いのが、人間の感情のもつれ合いだ。それも愛憎という形のもつれ合い。主人公や舞台は経済的に余裕のあるレベルに設定されることが多い。真の意味での庶民というのは主人公にはなりにくい。以前タイ人にその理由を尋ねたら、「あまりに身近過ぎて面白くないからじゃないの」と言われた。

なるほど、テレビドラマは等身大ではなく、憧憬や羨望といった感情を抱きながら見る、非現実的なものの方がウケるのかもしれない。しかしドラマの根底に流れる人間の感情というものは共通性があるから、屋台のオバちゃんや工場勤務のお姉ちゃんでもうまく感情移入できてしまうのか。

タイのテレビドラマには絶対に欠かせない登場人物がいる。それは愛人(お妾さん)という立場の女性だ。主人公がらみでなくとも、登場人物の中には必ずといっていいほどこういう女性が登場する。タイの法律では一夫多妻制は認められていないが、公認、非公認の場合を問わず、一夫多妻制は一部であるが存在する。

江戸時代の大奥ではないが、権力と金を手にした男性は愛人という立場の女性を囲っても、正妻以外には文句は言われない。むしろ囲えるだけの経済力があるステイタスの証であるとも言える。

夫、正妻、愛人の三人で、怒号が飛び交い、取っ組み合いをするシーンもタイのテレビドラマのお約束だ。がなり立てている声はただただ下品でけたたましく、顔は憎悪で醜くゆがんでいる。タイ人女性が喧嘩をするときは必ずこの声と顔になってしまうのは、タイ人の地ではなくテレビドラマに洗脳された結果かと思ってしまうほどだ。

見るもの見るもの、変わり映えのしないストーリーに加え、ぎゃんぎゃんと耳障りなシーンがうっとうしくなり、いつの間にかワタシはテレビドラマを見なくなってしまった。聞けば、タイのテレビドラマは30年前からこんなカンジだそうだ。それを教えてくれた人もテレビドラマはまったく見ないと言っていた。

刺激の強いスパイシーなタイ料理のように、日本人の感覚には合いづらいのかもしれない。

 

 

第11回:話してみる―同じ土俵でコミュニケート

 
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