■My Bangkok Life〜暮らしてわかったマイペンライの国

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。



第1回:イントロダクション〜バンコクとの出会い
第2回:住んでみる―意外と快適な住宅事情
第3回:食べてみる・前編―辛い料理は好まれない?
第4回:食べてみる・後編―屋台料理をエンジョイしよう
第5回:移動する・前編―陸の救世主はバイクタクシー
第6回:移動する・後編―渋滞知らずの水上交通
第7回:着てみる―足長スレンダーVS胴長短足


■更新予定日:毎週木曜日

第8回:買い物をする―タイ人も敬遠する“メイド・イン・タイランド”

更新日2002/10/24


これは何年前の歌なのだろうか。タイを代表するフォークソング歌手、カラバオが唄った“メイド・イン・タイランド”という曲がある。カラバオはこの曲の中で、「タイで生産されたものでも、タイ産とは書かずに日本産と書けばどんなに高くてもよく売れる」と痛烈に批判した。

事実、当のタイ人でさえ、「タイの製品は良くない」と言い切る始末だ。ここでいうタイの製品とは、タイ国内でタイ人がタイ人によって作った製品のことである。外資メーカーがタイの工場で生産している電化製品や自動車などは、いくらタイで作られていても“タイの製品”ではない。それはタイ以外の国のやり方で製造工程が厳密に管理されているからである。


6つの差込口のうち、3つは差し込めない延長コード

例えば電化製品。日本のブランドが売り場で幅を利かせているのは他の国でも見られる現象だと思うが、タイ産の電化製品はとにかく壊れやすいらしい。らしいというのは、うちにある電化製品は扇風機を除いてすべて日本の電機メーカーのものなので実感はない。

買ってから数ヶ月でどこかしらが調子が悪くなり、そのまま使えなくなってしまうのはよくある話だ。保証期間中だといってメーカーに修理を依頼しても、修理に何週間もかかったり、修理から戻ってきたらまだ直ってなかったというのも冗談みたいだがよく聞く話である。

例えば日用品。電気の延長コードなどは、電化製品のプラグがコンセントに差し込めないことがあるのだからうんざりしてしまう。差し込めても半分だけとか、ゆるくてすぐ抜けてしまうのは使い勝手をどうこう言う以前に安全性に問題がある。

洗濯ばさみは洗濯物をはさもうとすると割れてしまうし、スプーンは平たすぎて汁物がすくえない。露店の衣類は洗濯機で洗えば3回目にはほつれている。タイ人は日常生活を送るという一見淡々とした行為の中で、日夜このような理不尽なストレスと闘っているのだろうか。

いや違う。だからタイ人は「タイの製品は良くない」と言っているではないか。この種類のストレスを自分たちで経験する以前に、親の代、祖父母の代から連綿と続くタイ製品への嫌悪があの一言に凝縮されているのだ。

だがタイ製品は安い。人件費が安いのだから当たり前の話なのだが、それよりも、「どうせたいした金額で売れないんだから、適当に作っておけばいいや」という、製造者の作意が感じられるといったら言い過ぎだろうか。

安くて壊れやすい。“安かろう悪かろう”の王道を、世間の非難や中傷をまったく気にせずどかどかと歩いていく。それを買っていく側も、「これは安いんだからすぐに壊れても仕方ない」と諦観している。余計なストレスを溜めたくなかったら、そう思うのが一番なのだ。

だからなのか、タイ人は、「いいものを買って大事に長く使おう」というより、「そのときに必要なものをとりあえず買って、壊れたらまた新しく買えばいい」という主義の人が多いのがよくわかる。耐久消費財として売られているもののほとんどが、耐久せずに寿命が尽きていってしまうからだ。

品質のよいもの、耐久性のあるものを買おうとすると、自ずと外国製品になってしまうこの不条理(見方によっては立派な条理かもしれないが)を脱するには、タイ国内でタイ人によるタイ人に認められる製品を作る社会機構が必要なのだとも思う。

でもタイ人にとっては、一つのものを大事に長く使うのは性に合わないことなのかも知れない。タイ人は飽きっぽい。適当な時間が経過したときに新しいものを買う必要に差し迫られるのは、この飽きっぽさにうまくマッチした、ある意味とても合理的なことなのかもしれないと思ったりするのである 。

 

 

第9回:読んでみる―エロ・グロ・スプラッターな大衆新聞

 
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