■My Bangkok Life〜暮らしてわかったマイペンライの国

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。



第1回:イントロダクション〜バンコクとの出会い
第2回:住んでみる―意外と快適な住宅事情
第3回:食べてみる・前編―辛い料理は好まれない?
第4回:食べてみる・後編―屋台料理をエンジョイしよう


■更新予定日:毎週木曜日

第5回:移動する・前編―陸の救世主はバイクタクシー

更新日2002/10/03


バンコクの交通渋滞は手強い。今でこそ高架鉄道という新交通システムを使えば、時間通りに目的地に着くことも可能になったが、この高架鉄道ができる1999年12月以前は正に地獄だった。ワタシは普段ならバスで30分もかからない距離を、なんと3時間かけて帰った経験がある。

スコールが降ったといっては渋滞。交通事故が起これば道路がさえぎられて渋滞。スコールなんて雨季になれば毎日のように降るのだし、バンコク市内では交通事故は、1時間に5.9件起きている計算だ(年間に5万2千件)。渋滞しないようにしろという方が無理な話だ。


バンコク市内の救世主・バイクタクシー

そもそもバンコクは、モータリゼーションに完全依存した都市である。庶民の通勤通学の足は路線バス。路線バスのない地域に移動するなら、持てる民は自家用車で、持てない民はタクシーで。毎日のことなのでタクシーなんか乗っちゃいられないという人は、乗り合いのワゴン車で。路線バスより高いけど、タクシーよりははるかに安くつく。

でも、どれに乗っても渋滞にハマってしまえば身動きができないのは同じ。そんなときにタクシーに乗っていたら、メーターがカチカチ上がるので心穏やかじゃいられない。

エアコンなしの路線バスなら、排気ガスにまみれて窒息死寸前になりそうだ。観光客にお馴染みの、三輪タクシー“トゥクトゥク”もまた然り。乗ってみればよくわかる。料金は交渉制でボラれるし、暑いし、排ガス臭いし、いいことは何もない。

そんな渋滞にも救世主がいる。それはバイクタクシーだ。料金交渉制、エアコンなしという条件は変わらないが、どんなに渋滞していても自動車の間をすり抜けて、少しでも早く目的地に到着できることができるという点では、救世主の名に相応しいと思う。

渋滞の中のバイクタクシーは、“走る”というより“足を使って前に進んでいる”という感じだ。歩道に近いところを“走る”のではなく、ときには車と車の少しのすき間を縫うようにジグザグと進んでいく。でもこれで、赤信号待ちの車の列の先頭まで進んでしまえればこっちのもんだ。信号が青に変わったときに、少しでも他の車より先を走ることができる。

タイ人は、実に器用にこのバイクタクシーを使う。ソイと呼ばれる小路は、細く長く、行き止まりになっているところが多い。ソイの奥に自分の住まいがあれば、大通りに出るまでに相当な距離を歩かなくてはならない。

しかし、暑い陽射しの中、外を歩くという行為はタイ人が最も嫌うところである。日傘があっても、歩くこと自体がめんどくさいのである。そこでどうするか。このバイクタクシーを呼びつけ、大通りまでのわずかな距離を走ってもらうのである。

バイクタクシーも心得たもので、ソイの奥の集合住宅があるようなところには、必ずグループで待機している。ソイの入り口もまた然りだ。こういう短距離は料金がほぼ決まっていて、5〜10バーツ(約15〜30円)といったところだ。

短距離ではなく長距離を走る場合。いつもは路線バスを利用しているけど、たまたま寝坊して悠長にバスを待っていられないという場合。こういうときはソイの入り口までではなくて、会社や学校まで送ってもらえばいい。料金は距離と途中の道路の予想込み具合によって左右される。

スカートを履いた女性でも、当然このバイクタクシーを利用することがあるが、彼女たちは実にスマートにちょっと斜に後ろの座席に腰掛ける。決してまたがったりなんかはしない。傍から見ていると危なっかしくて仕方ないのだが、彼女たちは「これが当たり前」と言わんばかりに涼しい顔をしている。

でもワタシがそれをやると、足が車輪に巻き込まれないか、バランスを崩して倒れたりしないかと必死でしがみついているので、涼しい表情なんかできるわけもない。これが難なくできれば、ワタシも一人前のバンコク都民になれるかもしれない、と思うのだが。

 

 

第6回:移動する・後編―渋滞知らずの水上交通

 
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