第4回:食べてみる・後編―屋台料理をエンジョイしよう
更新日2002/09/26
ワタシの毎日の食生活は、タイ料理を中心に構成されている。家で自炊をするより外食の方がはるかに多いからだ。でも、独り暮らしなら自炊よりも外食の方が安上がりで経済的だし、その場で食べて帰れば面倒な後片付けもない。
外食といっても、きちんとかしこまった料理ではなく、いわゆるお惣菜や一膳飯の類が街中のあちこちの屋台で売られている。タイの人にしてみれば、家の台所で自分で作るか、外の台所(=屋台)で他人が作ったものを買って帰るか、の違いだけだ。自分でやるのが面倒なら他人にやらせてしまおうというのは、タイ人の基本的な気質だと思ってもいいと思う。

屋台で食べるカレーそうめん
屋台で売られている料理には持って帰れないものはない。むしろ、屋台はテイクアウト用に発達した文化かもしれない。それを証拠に、例えばスープのある麺であろうと、カレーやスープのような汁物のお惣菜であろうと、器用にビニール袋に詰めて、口を輪ゴムでぐるぐるっと結わいて持たせてくれる。
袋ははじけそうではじけないし、輪ゴムは取れそうで取れない。日本のコンビニのおでんの容器を思えばずいぶんと原始的だけど、あるものでなんとかするタイのたくましさが感じられる。
バンコクの歩道は、歩行者が歩く場所としての機能を半分くらいしか果たしていない。なぜなら、その半分は屋台や天秤棒を担いだ人の営業場所として確保されてしまっているからだ。今から約二年前までは、毎週水曜日が屋台の公休日とされ、その日は営業が禁止されていた。清掃を行き届かせて歩道に人が歩く道としての機能を持たせるためと、屋台業者の休日を確保していたのである。
だが、新バンコク都知事はこの公休日を撤廃させる政策で支持を得、現在は屋台業者は年中無休で営業できるようになったため、ますます歩道は歩行者のためのものではなくなった感がある。
と、文句は言いつつも、ワタシはこのごちゃごちゃした独特の雰囲気が大好きだ。毎日が縁日のようでなんか楽しいし、食べたくなるようなものがすぐ目の前で売られていて、それを手軽に買えるというのがいい。
カットフルーツやジュース、タイのお菓子や焼き鳥やら、ちょっと買って食べながら歩く。学校帰りの買い食いが楽しかったように、歩きながら食べるって行為は大人になっても充分楽しいものなのだ。
屋台の楽しさはもう一つある。それは屋外でご飯を食べられるということである。ふとした道端が自分の食卓になってしまう感覚は、日本ではなかなか味わえない。料理の味だけではなくて、空の色や風の匂いもりっぱなごちそうになる。ときには蝿が飛んできたり、ときには雨が降ってきたり、快適な食事環境とは言いがたいが、室内にはないなんともいえない解放感の中で食事をすると、いつもよりおいしく感じるのはワタシだけではないはずだ。
タイの人も充分にそれがわかっているのか、家庭でご飯を作っても、家の玄関先で食事をしている風景を時々見かける。暑い、暑いといわれるタイでも、陽が沈む頃にはなんともいえない心地よい風が吹くときがある。そんな風に吹かれながら家族と取る食事は、さぞかしおいしいことだろう。
特別でもなんでもない日常に幸せを感じることを、本当の贅沢というのではないかと思ったりするこの頃のワタシである。
第5回:移動する・前編―陸の救世主はバイクタクシー
