■My Bangkok Life〜暮らしてわかったマイペンライの国

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。



第1回:イントロダクション〜バンコクとの出会い
第2回:住んでみる―意外と快適な住宅事情


■更新予定日:毎週木曜日

第3回:食べてみる・前編―辛い料理は好まれない?

更新日2002/09/19


タイ料理を辛い料理だと思っている日本人は多い。確かにタイ料理は辛い料理だ。唐辛子やスパイス、ハーブをふんだんに使って、めりはりのある刺激的な味付けをする。でもタイで食べられている料理は純粋なタイ料理ばかりじゃない。中華や西洋、インドにマレー、最近は日本の料理までをもベースにして、タイ人の味覚に合うようにアレンジされたものが日常の食卓に上る。

“タイスキ”という料理をご存知だろうか。鍋に入ったスープにいろんな具を入れて、ピリッと辛いたれをつけて食べる寄せ鍋風の食べものだ。この“タイスキ”、タイ人が外食するときの人気ナンバーワンといってもいいほどなのだが、実はこの元になったのは日本のしゃぶしゃぶだという説がある。


南国の鍋もの、タイスキ

あるタイ人が日本に行ったときにこのしゃぶしゃぶの食べ方を持ち帰ったというのだが、うろ覚えだった料理の名前がいつの間にかすき焼きということになり、調理法はしゃぶしゃぶ、名前はすき焼きという滑稽な料理ができ上がったといわれている。

タイの人はこれを“タイスキ”と呼ばず、“すき焼き”を短くして“スキー”と呼んでいる。“タイスキ”は、たれを除けばまったく辛くない料理だ。逆に言えば、元の調理法を生かして、たれだけをタイ人の味覚に合うように辛くアレンジしたのだろう、と思う。

そういう風にアレンジされた料理で、もうすでにタイ料理として市民権を得ているものは多い。茹でた鶏肉を鶏のスープで炊いたご飯に乗せた“カオマンガイ”。シンガポールにも同じような料理がハイナン・チキンライスという名前で存在する。

大根と青菜、豚肉や鶏肉を煮込んだ“ヂャプ・チャーイ”。いかにも中華というこの料理は、お粥とお惣菜を出す店のメニューには欠かせない。豚肉や鶏肉を細かく叩き、唐辛子やハーブで味をつけた“ラープ”。これはラオスから伝わったと思われるもので、タイの中でもラオスに接する東北地方の郷土料理とされている。

いわゆる純粋なタイ料理が土着の食べものだとしたら、バンコクはタイの中でも土着の食べもの度が低いところだと思う。ファーストフード店は街中に乱立しているし、外国の料理を食べさせる店も腐るほどある。

だからなのか、若い世代の中には辛いタイ料理を受け付けない人もいる。辛い料理=垢抜けない、田舎くさいというイメージがあるということも否めない。辛い料理を好んで食べる人には地方出身者やブルーカラーが多く、そういう人とは一線を画したいという都会の人の見栄みたいなものも感じられる。

少し前までのタイでは、タイ人はタイ料理以外の料理を頑として受け付けなかった。それは傍目には喰わず嫌いとしか思えなかったのだが、「他の料理なんかよりタイ料理が一番おいしいんだから」という、タイ人なりのこだわりとプライドが感じられたのも事実である。

しかし、今はこういうこだわりやプライドを持つ人が少なくなったのか、それともテレビや雑誌のコマーシャルに洗脳されたのか、外国の料理を食べる人が確実に増えてきた。でも、「一番好きな料理はなに?」と聞くと、彼らはまず「タイ料理!」と答える。

そう、タイ人が一番好きな料理は、やっぱりどうしてもタイ料理なのである。頑固なまでのこだわりやプライドは彼らの中に密かに健在しているのだ。

 

 

第4回:食べてみる・後編―屋台料理をエンジョイしよう

 
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