最終回:タイの日本人・それでも皆生きていく
更新日2003/04/24
タイに住む前のワタシは、外国に住むということはかなりの一大事で、相当の決心をして飛び込むバンジージャンプのようなものだと思っていた。でも、足が離れてしまえば、あとは引力と足にくくりつけたゴムに任せておくだけ。びょーん、びょーんと宙を漂ううちに、だんだんとその浮遊感覚に慣れてしまう。
今のワタシはまさにその感覚に慣れてしまった状態だけれど、慣れるまでにはそれ相応の時間がかかっているし、現在進行形の葛藤や煩悶が全くないわけではない。ところが、世の中にはいろんな人がいるもので、そんな決心をすることもなく、頭を悩ませることもなく、近所のコンビニに出かけるくらいの気軽さでタイに住みに来る人もいる。

ストリートのインディーズバンド
タイに在住する日本人は推定約4万人といわれている。推定、というのは、日本人が外国に在留する際に、現地の日本大使館に届け出る在留届では把握しきれない枠の日本人がタイには多くいるからだ。この数字もどこかで目にしたという理由でここに引用したが、実態数というのは多分誰も知らないのではないかと思う。
長期滞在をしていても、職場や学校といったコミュニティに所属することなく、飄々と日々を送っている人たちがいる。観光客ではないが、在住者とも呼びにくい。彼らはタイだけに留まることなく、近隣諸国や日本との間を行ったり来たりしている場合が多いからだ。
タイに住んでいるのに、タイが嫌いだと公言する人もいる。イヤならさっさと帰ればいいのにと思うのだが、そういう人に限ってタイにしがらみがある。妻や夫がいたり、そこまでいかなくても抜き差しならない人間関係にハマってしまったり。
5年、10年、それ以上の単位で滞在している人の中には、酸いも甘いも噛み分けて、その結果、タイやタイ人が嫌いになってしまった人もいる。でも、そのときには、もう日本へ戻ることは考えない。そういう人たちは確実に30代の半ばを超えていて、日本へ帰ってからのことを考えるより、タイでやり過ごした方が無難だということを知っているからだ。
日本人が4万人もいれば、4万人分の生き方が自ずとあるわけで、希望や将来の目標に胸を膨らませて職場や学校に通っている人、親の代からタイに住んでいてタイが自分の祖国のようになってしまった人、自分の意思とは関係なく駐在させられることになってしまった人、流れ流れて気がついたらタイが一番肌に合っていた人など、ひとくくりにして語ることなど到底できない。まあ、日本人は型にはめて考えるのが好きなので、タイに住んでいる日本人とはこういうものとひとまとめにしたがるけれど。
前向きでなくても、頑張っていなくても、流されていても、現状を打開できなくても、それでも皆タイで生きていく。日本に住んでいる日本人だってそうなんだから、それでいいじゃないかとふと思ったりしている。
■挨拶は「もうごはん食べた?」〜バンコク街角通信
バックナンバー
