第28回:タイの日本人・自分試しをしてみたい
更新日2003/04/10
働き盛りの30歳、セールスマン。仕事もそこそこうまくいっていて、結婚を予定した女性もいる。何もこんなところで無理に方向転換しなくてもと思うのだが、仕事を辞め、彼女を日本に置いたまま、この4月からタイ語留学のためにバンコクに越してきた。
タイが好きで、この10年間に30回以上はタイへ足を運んだ。カタコトだけど、タイ語も話せる。カラオケも唄える。タイ人の友人もいる。でも彼は、それ以上のタイを手に入れたかった。
それ以上のタイとは…。それは、憶測や推量ではなく、タイ語で真正面からタイやタイ人とコミュニケイトした上で得られるものだと彼は考えている。世の中で何が起こっているのか。タイ人はそれについてどう思うのか。自分の考えていることをタイ人に知ってもらいたいし、タイ人がそれを聞いてどう思うのかも知りたい。
言葉は所詮ツールにしか過ぎない。そのツールを使いこなして何を得ていくかは、その人の意思に左右される。彼は、表面的にはわかっているようで、でも実はわかっていないタイを解き明かすためのツールとなるタイ語を習得していこうとしている。
そして、そのツールをうまく使いこなせたあかつきには、タイで仕事を得て、生活の基盤を固めたい。今はそうなれるかはまだわからない。でも、そこへ向かうための努力は絶対に惜しまないつもりでいる。

ネオンのハイビスカス
25歳、OL。大学のときに交換留学でタイのチェンマイに1年滞在した。日本に戻って大学を卒業し、就職してからも、再びタイへ渡る夢はあせない。タイが大好きになってしまったからだ。
交換留学生という立場は非常に心地よかったが、それはタイ人にとって“お客さん”にしか過ぎないとわかった。留学生や、日本人という立場で接してくれる人より、自分という生身の人間に接してもらいたいと思うようになった。
しかし、彼女に吹く風は向かい風だ。長期に渡る奨学金の返済。加えて、家族には経済的援助をしなくてはならない。それでも将来の目標を見つめる彼女の眼は、ひたむきでまっすぐだ。
5月には会社を退職し、タイに渡って本格的に職探しを始める予定だ。タイ語も英語もこなせる彼女なら、自分のやりたいことが叶えられる職場が見つけられることと思う。
タイの社会を形容するなら、「水は低きにつく」というのが相応しい。気がつくと、下に下にと流されてしまう。流されないように自分を律するのは、日本と違って思いのほか難しい。暑さは人を怠惰にするし、なによりタイ人は快適なことが大好きだからだ。そうした流れに身を任せてゆるゆると過ごしている外国人は山のようにいるが。
そんな社会構造の国に飛び込んで自分試しをしようとしているこのニ人。日本から来た水は、下には流れにくいところを是非見せて欲しいと思っている。
最終回:タイの日本人・それでも皆生きていく
