■My Bangkok Life〜暮らしてわかったマイペンライの国

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。



第1回:イントロダクション〜バンコクとの出会い
第2回:住んでみる―意外と快適な住宅事情
第3回:食べてみる・前編―辛い料理は好まれない?
第4回:食べてみる・後編―屋台料理をエンジョイしよう
第5回:移動する・前編―陸の救世主はバイクタクシー
第6回:移動する・後編―渋滞知らずの水上交通
第7回:着てみる―足長スレンダーVS胴長短足
第8回:買い物をする―タイ人も敬遠する“メイド・イン・タイランド”
第9回:読んでみる―エロ・グロ・スプラッターな大衆新聞
第10回:テレビを見る―大衆娯楽の連続ドラマ
第11回:話してみる―同じ土俵でコミュニケート
第12回:タイ人を知る―タイを語る二大キーワード
第13回:仕事をする―これであなたもタイが嫌いになる
第14回:タイは日本をこう見てる・日本食ブームの裏側
第15回:タイは日本をこう見てる・Jコミックの浸透度
第16回:タイは日本をこう見てる・アヤシい日本語大集合
第17回:タイは日本をこう見てる・炸裂J-POPパワー
第18回:タイは日本をこう見てる・タイ人的日本観
第19回:タイは日本をこう見てる・若者よ学べ日本語
第20回:タイは日本をこう見てる・日本女性は皆おしん
第21回:タイは日本をこう見てる・日本人の好印象度
第22回:タイの象・その知られざる苦難
第23回:タイの蘭・タイ人も知らない国花とは?
第24回:タイの日本人・タイで日本を表現したい
第25回:タイの日本人・タイ語コラムニスト
第26回:タイの日本人・タイ伝統人形劇に携わる


■更新予定日:隔週木曜日

第27回:タイの日本人・自ら命を絶ちゆく人

更新日2003/03/27


去年から今年にかけて、タイで自ら命を絶っていく日本人のニュースが後を絶たない。驚かされるのは、この手のニュースは地元メディアや現地の邦字メディアでは取り上げられることがあっても、日本国内のメディアではほとんどと言ってよいほど取り上げられない。殺人事件ならともかくも、外国で自殺した日本人のことなど、とるに足らない話に過ぎないと言っているかのようだ。

2002年5月。日本人男性のK・Mさんが、刃渡り約25センチの刃物で、首の左右2ヵ所、左右手首の2ヵ所、左右足首の2ヵ所、腹部3ヵ所に傷をつけ、失血死した。住んでいたマンション周辺の食料品店に、毎日のように呑んでいた酒代のツケが溜まっていた。

以前に住んでいたマンションでも一度自殺未遂騒動を起こしたが、このときは隣室の人に助けられて一命をとりとめる。が、これが原因でマンションのオーナーに追い出されて、現在のマンションには2001年9月から住んでいた。1ヵ月ほど前に管理人が家賃を集金に行ったが、「お金がない」という理由で支払ってもらえず、そのままになっていた。

同じく2002年の3月には、バンコクの高架鉄道で投身自殺を図った日本人がいる。幸か不幸か命に別状はなく、近くの病院に運ばれた。電車の車両に飛び込んだのではなく、駅の柵を越えて道路に飛び降りたのだとか。


バンコクを走る高架鉄道

2002年も終わりを迎えようとした12月のこと。日本人男性T・Oさんがバンコクのサービスアパートで、口の中に銃口を突っ込んでいる状態で発見された。部屋からは遺書が見つかり、争った形跡は見られなかった。警察は遺体を病院に運び検死をしたが、自殺であろうと発表した。警察は、この男性は日本で金銭や家族の問題を抱えていたのではという見解を示している。

2003年の年明け早々には、日本人母子が8階建てのマンションから投身心中している。母親はK・Iさん(26歳)、子供はRちゃん(5歳)。Rちゃんは首の骨を折って即死したが、母親は病院に運ばれたのち死亡。

マンションの警備員の話によると、当日の朝、KさんにRちゃんの写真を見せられた。しかし、言葉が通じず彼女が何を言いたいのかまったく分からない。 Kさんは話が通じないのに諦めたのか、部屋に戻って行った。そしてしばらくしたのちに地面に何かが落ちる大きな音がして、二人が投身したことが分かった。

Kさんは、M・Mさんという妻子ある日本人男性と交際していた。マンションの家賃も含め、生活費はこのMさんがすべて面倒を見ていたと言う。Kさんは離婚歴があり、Rちゃんは前夫との間の子供だった。Mさんは自分で事業をしていたが、数カ月前から仕事がうまくいかず、日本に帰国してしまっていた。生活費の援助もなくなっていたため、家賃の支払いが滞るような状態だった。

Kさんは日本人の友人や知り合いがまったくいなく、Mさんが日本に帰国してからは他人と会話することもなく、異国の社会の中でどんどん気持ちが沈んでいったのではないかというのが、新聞に載っていた専門家の発言だ。

同じく2003年1月。バンコクの観光スポットでミャンマーからの革製品を販売していた日本人男性が、住まいのマンションから投身自殺。家賃が滞っていたり、他人と接触するのを極度に避けていたことから、新聞記事には「日本のやくざに追われていたのではないか」と書かれていたが、持病があったり、事業の資金繰りに悩んでいたのではという憶測も出ている。

しかし。「日本人がタイで自殺した」というニュースを聞くと、その人たちとは直接面識がなくても、どきりとした気分にさせられる。彼らの抱えていた悩みや苦悩が、いつか自分に降りかかってきたときに、ここタイで自分がそれを前向きに解決することができるのだろうかと訝ってしまう部分があるからかもしれない。今はまったくの他人事でも、いつか他人事でないときが来るかもしれないのだ。

母子心中をしたKさんは、ノートに遺書めいたものを遺していた。彼女の遺体は灰にしたのち、タイの土に埋めて欲しいと書いてあったそうだ。

 

 

第28回:タイの日本人・自分試しをしてみたい

 
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