第25回:タイの日本人・タイ語コラムニスト
更新日2003/02/27
サブカルチャー系雑誌、『a day』。主な読者層は、10代から30代までのプログレッシヴなバンコキアン。この『a
day』にタイ語でコラムを執筆している日本人、鈴木良太さんはタイの若者の間ではちょっと知られた有名人だ。
彼のコラムのタイトルは、『ティーム・プラーディップ』。直訳すると、『刺身チーム』という意味になる。『刺身』は、タイ人が日本人を象徴的に表すときに使われる表現の一つだ。その『刺身チーム』のリーダーともいうべき彼が『a
day』に初めて出会ったのは、創刊されて半年ほど経った頃だった。
表紙に、顔を白く塗った女性が全身タイツ姿で立っている。フシギな印象を受けて、手に取ってぱらぱらとめくってみる。当時、彼は邦字情報誌の編集部で日々アートワークを制作する仕事をしていた。日本で編集の経験があったわけではない。仕事の中で試行錯誤しながら、徐々に技術を身につけていったという感じだった。

雑誌『a day』の表紙
『a day』のレイアウトは、ページの空白がうまく活かされていた。それを見て、「こういうレイアウトをしてもいいのか」と目からうろこだったという。情報誌のアートワークを作るときには、空白はあってはいけないものと思っていて、それを懸命に埋めていく作業をしていたからだ。
彼は『a day』に興味を持ち、手土産に自分の作る情報誌を抱えて編集長にインタビューに行く。編集部のオフィスは、仕事場というより大学の部室のようだった。スタッフは皆、サークル活動のように雑誌の誌面を作っている。
編集長のウォンタノン氏曰く、「雑誌は娯楽のものだから、作る側が仕事感覚で作っていたら読む側はつまらない。作る側も娯楽感覚を忘れないようにしないと」。気乗りしないときは出勤しなくてもいい。雑誌を作ることが楽しいからやる。スタッフ全員が『a
day』に愛を持っているのを感じた。
手土産のバックナンバーには、彼が描いた4コマ漫画が載っていた。それを見たウォンタノン氏は、「うちの雑誌にコラムと4コマ漫画を描かないか」と話を持ちかけてきた。興味は沸いたが、どうしようかと考えているうちに1カ月が過ぎてしまった。面白いことを書く自信はない。でもやってみたい。最終的にはその好奇心が勝った形になった。
コラムを書くときは、自分にしかわからないようなタイ語と日本語の構成案を作り、それを基に口述してタイ人の友人にタイプしてもらう。多少校正してもらうことはあるが、基本的には手を加えない。タイ人が読めば、外国人が書いたタイ語の文章というのはすぐわかる。
コラムのテーマは、タイの出来事に対する彼の印象や疑問、ある事象についての日タイ比較論といった感じだ。バンコクの路線バスの話、お風呂の話、タイ人男性は本当に浮気性なのか、タイ人はなぜタイ映画を観ようとしないのか……。ちゃんとファンレターをくれる読者がいるのだから、反応はまずまずと言っていいだろう。
自分がこんなことをしているのは、すべて“縁”だという。タイに来たきっかけも、母親が30年前にボランティアでタイを訪れていたから。情報誌編集部に勤め始めたのも、書き溜めておいた作品をスタッフに見せに行ったから。『a
day』にコラムを書いているのも、編集長にインタビューを取りに行ったから。
今後も事情が許す限り、タイで何かがしたいと考えている。『a day』の読者を見ていると、タイには日本の製品や文化がイヤというほど入り込んでいるけれど、相互交流はほとんどなされていないと感じる。「日本よりタイが好き」な自分が、タイのものを日本人に伝えるようなことができたらいいのではないか。
毎週第1土曜日は『a day』の縁で、FMのラジオ番組にゲストDJとして出演している。今度はこのラジオが縁で、刺身チームの新しい世界が広がっていくのかもしれない。
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