第19回:タイは日本をこう見てる・若者よ学べ日本語
更新日2003/01/16
タイ人の日本語人口は多い。統計数値はないが、それは日本人のタイ語人口よりはるかに多いだろう。土産物売りや飲み屋のおネエさんのアヤシイ日本語もさることながら、意外ときちんとした言葉遣いや発音で話す人も大勢いる。
その中にはもちろん日本への留学組も含まれるのだが、タイ人にとって日本への留学というのはそんなに簡単な話ではないので、そういう人たちは一部分を占めるに過ぎない。ちなみに留学組には2種類あり、私費や公費で留学する真のお坊ちゃん・お嬢さんと、学費を稼ぎながら学校に通う苦学生とに分けられる。(余談だが、ワタシはこの苦学生たちを“出稼ぎ留学組”と密かに定義している。)

歩行者天国のアマチュアバンド
いずれのケースにしても、日本の地を踏むことができて、そこで生の日本人と触れ合いながら日本語を習得する機会に恵まれた人は、タイの中でもラッキーな部類の人だといってもよいと思う。
そんなチャンスはなくとも、自分の努力と頑張りだけで日本語を物にした人は多い。彼らの日本語を勉強し始めた動機というのは実に様々だ。
日本語のテレビアニメを吹き替えなしで見たいがために日本語を勉強した人。高校の選択授業で日本語を選んだ人。高収入の仕事に就けるのではないかと淡い期待を抱いた人。X-Japanが好きで日本語を勉強した人。
その人の頑張り具合と多少の素質によって、日本語のレベルは上下する。けれどもワタシからしてみれば、その国へ行くこともなしに言葉を勉強するなんて、一見無駄な努力にも思えるし、希望や憧れの度合いの強さに感服したりもする。
タイ人の話す日本語は一種特徴的だ。タイ語の中に存在しない音は、日本語を習ってもうまく発音できないことが多い。特にサ行の“シ”やザ行の音がそうだ。
タイ語では“シ”は厳密に言えば“シィ”だし、単語によっては“シ”と“チ”の中間のような音に聴こえるため、はっきりした“シ”を発音するのが難しいらしい。だから、電話を取れば「もちもち〜」だし、寿司は「すーしぃ」になってしまう。
バンコクの街中に頻出する象は「そー」。日本語の“禅”をもじったレストラン、ZENは“せん”。いすず自動車に至っては、社名のタイ語表記は堂々と“いすす”になっているのだから驚く。
促音の発音もタイ人には難易度が高い。つまらなくてはいけないところがつまらなかったり、省略されてしまう。「今日」は「きよう」だし、「わかった」は「わかた」になってしまう。タイ語の母音の中にある短母音と呼ばれるものはすべて促音のはずなのに、日本語になってしまうと、突然舌がその機能を失ったかのようになるのだからおかしな話だ。
でも、彼らがどんなにヘンな日本語を話していても、ワタシはそれを面と向かって笑う気にはなれない。29歳からタイ語を勉強したワタシには、新しい言葉を習得するということがどれだけ難しいかということを身を持って体験しているからだ。
先月、日本のある芸能人が訪タイしたときのことだ。テレビ番組や記者会見のときに付いていたタイ人男性の通訳の方が、非常にきれいで流暢な日本語を操るのでびっくりした。「もうタイ料理は召し上がりましたか?」――“召し上がる”という言葉がすっと遣える人は、今の日本人の中にも少ないように思えた。
ところがインタビュアーの日本語が丁寧でかしこまっているのにも関わらず、答える側の日本語はことごとくタメ語だった。そういう物言いはその人のキャラクターなのかもしれないし、そういうところが好きというファンもいるかもしれない。でもワタシは「外国人の日本語の方がきれいだなんて……」と、がっかりしながらテレビの画面をいつまでも見つめていたのだった。
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