■フロンティア時代のアンチヒーローたち 〜西部アウトロー列伝



佐野 草介
(さの そうすけ)



海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

■貿易風の吹く島から
〜カリブ海のヨットマンからの電子メール
[全157回]




第1回〜第50回までのバックナンバー

第51回:Butch Cassidy_キャスル・ゲイト その2
第52回:一つの鮮やかな成功は常にモノマネザルを呼ぶ
第53回:ミーカー銀行強盗の怪
第54回:マッカテ ィー一族 その1


■更新予定日:毎週木曜日

第55回:マッカティー一族 その2

更新日2007/11/08


コロラド州、デルタの町は東にメッサ(Mesa;スペイン語でテーブルの意味)と呼ばれる頂上がどこにあるのかないのか、25〜600メートルの平らな高地が広々と続く山を臨み、西にユタ州まで延々と広がる乾燥した山裾の台地にある。土地の人は、単にバッドランド(悪い土地)と呼び捨て、およそ農耕、牧畜にも適していない砂漠の延長線上である。

しかし、デルタには町の生命線とでも呼ぶべきガニソン川が走っており、開拓者たちが川の水を利用しようと辛酸を重ねて掘った灌漑用水路が張り巡らされ、その結果、用水が届く範囲は緑に覆われるようになった。灌漑用水の届かない地域とそれはまるで線を引いたようにくっきりとした境界線を作っている。降水量が極端に少ない砂漠の一端では、水のあるなしが土地を生かすか殺すかの絶対条件なのだ。

デルタの町は、典型的な西部の農村として大きく発展することもなく、ゴーストタウンになることもなく、周囲100マイルの農民や牧畜業者の需要を満たしてきた。メッサ連山の南に石炭が見つかり、炭鉱関係者が山から降りてきて散財する余禄にありついたこともあったが、ブームには程遠いものだった。デルタは殺伐とした事件など起こったことがない、半ば眠っているような平和な町だった。


1900年のデルタのメインストリート。
右に見える屋根の尖った建物は商工会議所。
マッカティー一族が銀行強盗を働いた1893年には
まだ建っていなかった。F&M銀行は商工会議所の筋向いにあった。

そんな町にトム、弟のビル、そしてアウトロー英才教育のためだろうか、ビルの息子フレッドの3人が町に一つしかない銀行、農業商業銀行(Farmers & Merchants Bank)を襲ったのだ。この襲撃はデルタの町の人にとっては町開闢以来の悲惨な事件だった。

1893年9月6日、3人組は偽名で投宿し、ブリックトップス・レストラン(Bricktop's)で昼食を取り、夕食と朝食をセントラルハウス・レストランでとった。その他の時間は、銀行とメインストリートを挟んだ向かいにあるバー、ステーィヴ・ベイリー・サロンで銀行を監視しながら長時間粘っていた。現場の下見と計画の最終点検でもしていたのだろう。


F&M銀行のあったところ。
今は誰が買うのかホコリをかむるに任せた古臭い商品が並んでいる。

翌9月7日、デルタの住人スミスが、強盗の一人(トムであることが後日分かった)が朝っぱらからウイスキーをラッパ飲みしながらバーからメインストリートに出たのを目撃している。10時15分、ビルと息子のフレッドはバーから通りを歩いて横切り、銀行に向かった。トムは二人の馬を曳き銀行の裏口へ回った。

銀行内には、この銀行の共同経営者の一人ブラッチェリー(A.T.Blachley) と行員のウォルバート(H.M.Wolbert)の二人がいた。フレッドは、カウンターの上に張り巡らされている鉄格子を乗り越え、二人に拳銃を突きつけ金を出すよう要求し、ビルの方は見張りと牽制を受け持った。ビルは、ウォルバートが銃に手を伸ばそうとしたのを見逃さず、彼に銃口を向け、無駄のことはやめるよう脅した。だがその時、ブラッチェリーが大声で叫んだのだ。恐らく「強盗だ!」とでも言ったのだろうか。ここでフレッドの若さ、青さが一挙に顔を出してしまったのだ。

恐怖に陥った人間ほど危険なものはない。フレッドは至近距離からブラッチェリーの顔へ銃弾を放ったのだ。しかも2発まで。弾は左アゴから入り脳天に抜け、ブラッチェリーは即死だった。地元の尊敬を集めていたブラッチェリーは、7人の子供を遺し40歳の生涯を終えた。彼の妻は、口糊をしのぐためピアノを教えながら、子供たちを育てた。


1893年9月13日付けの“Delta Independent”紙。
第一面で大きく事件を取り上げている。
デルタの博物館でコピーさせてもらったが、この日の新聞は
よほど沢山の人が借り出し、コピーをとったのだろう、
私もその一人なのだが、紙面が汚れ
判読困難なところがあるくらいだ。

アウトローとしてまだ尻の青いフレッドが撃った、この2発の銃声が強盗たちの運命をも決めることになった。

-つづく

 

 

第56回:マッカティー一族 その3


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