第45回:Butch Cassidy_友人マットを救え
更新日2007/08/30
モンペリエーの町にとってもベアーレイク郡にとっても、銀行強盗は晴天の霹靂だった。海から何百マイルも離れた山間の町に突然、来るはずのない津波が襲ってきたようなものだった。銀行襲撃から1週間後、シェリフのデイヴィスはすでに犯人追跡を半ばあきらめたかのように、「今頃、犯人どもはどこか怪しげなサロンバーでお金を使い果たしていることだろう」と新聞『イクザミナー』に語っている。
銀行員のバッドは、事件は13日、3時13分に起こり、その日の13番目の客が13ドルの預金をした時だったと、数字の13を並べ立てて本気で不運を数字のせいにしたりした。
ブッチ、エルジイ、ボブの3人は、ロックスプリングの弁護士ダグラス・プレストンの元に直行し、カッパラッタお金16,500ドルのほとんど全額をマットとウォールの弁護料、マットの若い妻ローズの医療費(癌で片足を切断した)として手渡したと言われている。
何度か州の独立、独自性に触れたが、ダグ・プレストンはワイオミング州の弁護士で、隣りのユタ州で起きた事件をユタ州の裁判所で弁護するのは、不可能ではないにしろ不利だった。プレストンは二人のユタ州の犯罪専門の弁護士、D.N.
Straupp と Orland W.Powersに渡りをつけ、マットとウオールの弁護に当たらせた。
ダグ・プレストンがマットとウォールの無罪を請け合ったにもかかわらず、裁判は不利な状況に陥っていった。検察側はマットとウォールがいかにアウトローの生活を続けてきたか、特にマットは拳銃、ライフルともに名手で殺す意図で撃ったと、状況証拠だけで演繹し、陪審員の心情を勝ち取っていった。
ブッチは裁判の展開をどこかで、恐らくはエルジイの愛人マウド・デイヴィスの実家で見守っていたことだろう(ブッチはその後何度かマウド・デイヴィスの母親に手紙を書き送り、それらは貴重な史料になっている)。
裁判が不利な方向に向かっているのを知ったブッチは、他の面会人のBob Swift(コールマンのパートナーで面会を許されていた)を介してマットにメモを渡している。「マット、仲間は集結している。お前が一言、ヤレと言えば、直ぐに脱獄させる」と、書き送ったのだった。
すでにブッチの名前が一人歩きしており、マット救出を企んでいるという情報が飛び交っていたので、拘置所のあるオグデン当局は厳戒態勢を強くしており、マットに渡されるはずのブッチのメモが当局の手に渡ってしまった。
当局がマットに強制的に返事を書かせたのか、その時点ではまだ裁判を楽観視していたマットが自主的に書いたのか分からないが、マットはブッチ宛てに、「ブッチ、そんなことはするな。ここの看守たちはとてもよくしてくれている。(脱獄のための銃撃戦で)彼らに怪我をさせるようなことはしたくない。プレストンは私たちは無罪になるだろうと言っているし、万が一有罪になっても1、2年のことだ。危険を犯すようなことはしないでくれ。ともかくありがとう」と書き送ったのだ。
それに応えたブッチの最後のメッセージは。「マット、もし刑が2年以上なら、必ず助け出す。グッドラック!」というものであった。
マットとウォールの裁判は、9月8日に始まった。が、その翌日ユタ州の大手の新聞『Salt Lake City Herald』が、弁護士ダグ・プレストンはブッチたちがモンペリエーの銀行強盗で奪ったお金を弁護料として受け取っていると、一面ですっぱ抜いたのだ。
このニューズは裁判全体にさらにマイナスの要素として作用した。プレストンはアウトローお抱えの弁護士で、不当な利益を銀行強盗のお金から得ている、これは銀行強盗を促進しているようなものだと、マットの裁判のあり方に疑問を投げかけ、悪徳弁護士プレストンのイメージを形作る論調を展開したのだ。
これに対し、『Salt Lake City Herald』とはライバル関係にあるOgdenの新聞『Standard
Ogden』がプレストンの反論を載せている。ここで、プレストンは相手が明確な証拠を掴んでいないのを見抜き、堂々と嘘で固めた理論を展開している。
まずお金は、モンペリエーの銀行強盗以前にアイオア州にいるコールマン(マットとウォールを雇った人物)の妻から受け取っていること、ブッチはモンペリエー襲撃当日にユタ州のヴェナルにおリ、証人も沢山いる、云々。弁護士というのはこれくらいの嘘を平気で言えるくらいでなければ勤まらないのであろう。
その後もこの二つの新聞社の論争は続くが、プレストン側、マットとウォールに不利な風向きになったことは否めない。
…-つづく
第46回:Butch
Cassidy_マットの裁判

