第68回:ジョー・ウォーカー その2
更新日2008/02/28
銃火器を手にして敵と向かい合い、戦うのはよほど場数を踏まなければ、冷静に状況を判断し、正確に的を絞れるものではないらしい。実戦では古参兵が経験の足りない上官に命令とは言わないまでも、指示忠告を与えることが往々にして起こる…と戦記などにある。
ジョー一人を取り囲んだ5人の追跡団は、マックスのライフルが壊され、首領格の保安官(シェリフ)タトルが撃たれ、戦意を一挙に失い、逃げ帰ってしまった。
翌朝、現場に救援隊を連れて戻ってきたが、ジョーは夜の闇にまぎれて逃げた後で、タトルだけが虫の息で転がっているのを見出しただけだった。
瀕死の重傷を負い、まだベッドから這い出ることすらできないシェリフ・タトルの元にジョー・ウォーカーから一通の手紙が届いた。「あなたが怪我をされたことにつき、お詫び申し上げます。もしあなたがこの件で吊り合いを取りたいと言うなら、私は3頭の馬をあなた宛に送りますので、それを売り医療費に当ててください。残額は私の方へ送り返して頂ければ幸いです」と、ふざけた調子の内容で、もちろん3頭の馬とはウィットモアー牧場から盗んだ駿馬のことである。
その後、ジョーはまたまたプライスの町を徘徊し、因縁のあるウィットモアー牧場から2頭の馬と25頭の牛を盗んでいる。しかし犯罪者にとって同じ地域で、しかも同じ手口で犯行を重ねることほど危ないことはない。行動のパターンをシェリフに読まれてしまうからだ。おまけにジョーの首には500ドルの賞金がかかったのだ。例の"生死を問わず"というお尋ね者の懸賞金である。
今度の追跡団は13人もの大編成になった。USマーシャルで百戦練磨のジョー・ブッシュ(当時まだFBIはなかった)も加わった。追跡団は着実にジョー・ウォーカーの足跡をたどり、ユタ州グリーンリバーの土手にキャンプしたのは追跡を開始してから12日目の5月13日の金曜日だった。なんとそこから一マイルと離れていないところにジョー・ウォーカーと仲間3人もキャンプしていたのだ。先に気付いたのは追跡団の方だった。追跡団は馬に乗らず、徒歩で静かにジョー・ウォーカー・グループに接近し、包囲を完了したのだった。ということはジョーのグループは見張りすら立てていなかったのだ。
この銃撃戦、逮捕の様子を追跡団にいたウアーフ(J. W. Warf)が後にインタビューで語っている。
USマーシャルのジョー・ブッシュが、「お前たちはすでに包囲されている。両手を上げて降伏しろ」とでも叫んだのだろう、逮捕前の降伏勧告をしたのに対し、ウォーカーともう一人のアウトローは即座に反撃に出た。だが、彼らは身近にライフルを置いていなかった。リボルバーの拳銃だけが彼らの武器だった。ジョー ウォーカーは射撃訓練の標的のように50発もの銃弾を浴び生涯を終えたのだった。もう一人のアウトローも、ピストルをかざして逃げようとしたところを背後から集中弾を受け即死した。残る二人のアウトローは両手を高々と上げ降伏し、命を拾った。すべては一分間ほどでケリがついたのだった。

今のトンプソンの停車場。
汽車が止まらなくなってからもう50〜60年は経つのだろうか、
停車場として使われていた小屋は荒れ放題だ。

トンプソンは町や村というより、駅周辺に4、5軒の
うち捨てられた家の残骸があるだけだ。
線路沿いには電信ケーブが走っている。トンプソンからプライスの町にジョー ウォーカーほか1名即死、2名逮捕の電報が送られた。プライスの町は開闢以来最大のニュースに沸いたのだった。ジョー・ウォーカーと一緒に殺されたアウトローがブッチ・キャサディーだったからだ。そして逮捕されたアウトローの一人がエルジー・レイだったというのだ。
このニ人は鮮やかにキャッスルゲイトの鉱山給料を奪ったことで、すぐ隣町のプライスでは伝説になっていたのだ。二人に掛かっている賞金の額が小者のジョー・ ウォーカーとは桁違いだったから、USマーシャルのブッシュだけでなく、追跡団全員が色めき立ったのも無理がなかった。ウサギ狩にでかけ、ライオンを仕留めたようなものだ。
『ブッチ殺される』のニュースは、ユタ、ワイオミング、コロラドの各州知事にまで即日届いた。

プライスのメインストリート。
プライスはカラフルな西部の歴史に溢れた町だが、
炭鉱は閉山になりやっとカウンティーの首都として(カーボン郡)
生きながらえているような寂れた小さな町だ。
ブッチの朋友マット・ワーナーが後年、この町のシェリフになった。
ジョー・ウォーカーとブッチ・キャサディーの死体は、プライスへ鉄道で移送され、市民の前に一般公開された。有名なアウトローの死に様を一目見ようと小さな炭鉱町プライスの住人の100パーセント以上が押し寄せたとある。プライスの町にとって大スターがやってきたような最大のアトラクションだったのだろう。100パーセント以上というのは、何度も繰り返し見に来る御仁が大勢いたのだそうだが。
…-つづく
第69回:自分の葬式に参列した男

