■フロンティア時代のアンチヒーローたち 〜西部アウトロー列伝



佐野 草介
(さの そうすけ)



海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

■貿易風の吹く島から
〜カリブ海のヨットマンからの電子メール
[全157回]




第1回〜第50回までのバックナンバー

第51回:Butch Cassidy_キャスル・ゲイト その2
第52回:一つの鮮やかな成功は常にモノマネザルを呼ぶ
第53回:ミーカー銀行強盗の怪
第54回:マッカテ ィー一族 その1
第55回:マッカティー一族 その2
第56回:マッカティー一族 その3
第57回:マッカティー一族 その4
第58回:ブッチのエピソード その1
第59回:ブッチのエピソード その2
第60回:The Sundance Kid (サンダンス・キッズ) その1
第61回:サンダンス・キッズ_その
第62回:サンダンス・キッズ_その3
第63回:サンダンス・キッズ_その4
第64回:サンダンス・キッズの初仕事
第65回:ベレフォーシュ銀行強盗
第66回:アウトローと愛国心


■更新予定日:毎週木曜日

第67回:ジョー・ウォーカー その1

更新日2008/02/21


よく西部劇に登場する人物の典型は、たくましい体を汗とホコリにまみれたシャツに包み、バンダナを首に巻き、ウマの脂汗がのりテカテカに光った乗馬ズボンをはき、無精髭が浅黒く焼けた顔を覆い、潰れたテンガロンハットがその上にのっている、そしてサローンバーでウィスキーを浴びるように飲み、喧嘩早くてすぐに拳銃を抜くのを身上としている無法者カウボーイではないだろうか。

それを絵に描いたような人物が、ジョー・ウォーカーだ。

ジョーがユタ州、プライスの町にテキサスから流れついたのは1891年のことだった。カウボーイの仕事、牛を駆り集めたり、移動させたり、焼印を押すために子牛を投げ縄で捕らえ、素早く足を縛り上げる作業にジョーは熟達していた。彼ほどの技量があればどこの牧場でも容易に職を見つけることができた、しかし長続きはしなかった。

極端な酒好きと、ジョーの胃袋は酒樽でしかも彼の樽は底が抜けていると言われるほどの大酒飲みだったのだ。おまけに酔うとすぐに喧嘩をおっぱじめるのだ。素手なら体、顔に青アザを大量につけるだけで済むのだが、ジョーはやたらに拳銃をぶっ放したがる傾向があり、始末に終えなかった。彼の人生はサロンバーで酔っ払った挙句、サロンバーをぶち壊す乱闘だけでで色付けされていた。

製材所で働いたこともあったが、むろん長続きするはずもなく、1895年にプライスの町なかにあるサロンバーでいつものように酔っ払った末、ミルバーン(Milburn)という男を殺してやる(この人物、ジョー・ウォーカーに殺されそうになったことだけで西部アウトロー史に名前が残ったが、どのような人物であったか仔細は不明だ)、プライスの町を乗っ取ると暴れ出し、シェリフがやっと腰を上げ、ジョーの逮捕に乗り出した。

ジョーの自分の身を守るための判断と行動、要は逃走のことだが、その早さは天性のものだろう。いくら酔っ払っていても、シェリフが登場してくるや否や、即逃走の態勢に入るのだ。プライス界隈の鼻つまみ者ではあったが、このときまでジョーに犯罪歴はない。

ジョーはユタ州を南下し、ヘンリー連山の麓に身を潜めた。そこはブッチたち、ワイルドバンチの拠点、ロバーズ・ルースト(盗賊たちの砦)から30〜40マイルの距離しかなく、恐らくはそこでワイルドバンチの面々と親交を結んだものと思われる。

ジョーの行動には、首尾一貫した計画性は微塵もない。あるのは目まぐるしく変わる衝動とバッカスの誘惑に絶対服従する精神だけだった。一つだけジョーにはどのような確執があったのか、プライスの町と郊外にあるウィットモア(Whitmore)牧場にこだわっていた。

ウィットモア牧場は優秀な馬をかけ合せ、育てることで中西部では名が通っていた。ウィットモアの娘の一人をジョーが略奪するように連れ去り結婚したとも、強姦同様に手篭めにした後で捨てたとも、その娘の方が荒くれジョーの元に飛び込んできたとも言われている。

ともかくジョーはプライス郊外のウィットモア牧場に舞い戻り、牧場で最も優れた馬3頭盗んだのだ。ただ単にプライス界隈をよく知っているという理由で、逮捕状の出ているプライスに舞い戻るのもだろうか? ウィットモア牧場と何らかの因縁があったと考えるのが自然だろう。

ウィットモア兄弟は、シェリフ(保安官)のタトル(Ebenezer Tuttle)とともに追跡団を組織した。追跡団は5名から成り、その中にロバーズ・ルースト(盗賊たちの砦)でジョーと面識があり、互いに忌み嫌いあっていたアウトロー、ガンプレイ・マックス(C. L. Maxwell)がいた。

シェリフはマックスを迷路のように複雑な峡谷、ロバーズ・ルーストへのガイドとしてお金を出して雇ったのだ。マックス自身浅からぬ因縁のあるジョーを追い詰め、殺すことができるチャンスを得たのだ。この追跡団は食料、キャンプ道具、乗り換え用の馬、武器など、恐らくウィットモア家がバックアップしたのだろう、とてもよく準備されていた。

追跡団はジョーの跡をたどり、プライスから南下し、サン・ラファエル峡谷に入って行った。200〜300メートルの高さで岩が地表をブチ破り、斜めに45度の角度で連らなり、突き出て奇観をなしているところだ。そこにメキシカン・ベンドと呼ばれる乾いた小さな谷が走っている。

ジョーは、そこで昼食の支度をしていたとこを追跡団に襲われた。キャンプするつもりだったのだろう、鞍は馬から下ろしており、馬に乗って逃げることはできず、ライフルだけを握り背後の岩山に逃げ込んだのだった。


サン・ラファエル・スエル。
斜めにササリ出た巨大な岩が、このように200マイル
以上にわたり連なっている。

ジョーが身を隠したのは、大きな石の陰で背後には切り立った岸壁がそびえ、後からの接近は不可能であり、前方は大きな岩が身を守ってくれるという、身を守るのにこれ以上望めない地形だった。攻めるほうは身を隠す岩や石が少ない急斜面をジョーからの被弾を覚悟して正面から接近するしかなかった。

シェリフのタトルは、ジョーを前面から囲むように追跡団を3手に分け3、4時間粘った。ジョーにしてもその場に隠れてさえいれば安全だが、逃げようがないのだから、持久戦に持ち込み援軍を呼ぶ選択肢はあったはずだが、夕暮れ前に決着をつけようとあせったのだろう、3手に分かれた追跡団に相互に援護射撃をしながらの接近を命じたのだ。

ジョーは、自分を売った裏切り者で、オマケに官憲の犬にまで成り下がったと思ったかどうか、ともかくマックスが45メートル程の距離に近づいたとき、マックスを撃った。弾はマックスが匍匐(ほふく)前進で胸に抱くように持っていたライフルの弾倉に当たり、ライフルが使えなくなったが、彼自身は負傷せず、転がるようにジョーの射程距離外に逃れたのだった。いくらマックスがピストルワザで鳴らしたとはいえ、とてもライフルとピストルではハナから勝負にならないのだ。

次に狙われたのは、シェリフのタトルだった。ジョーのライフルはタトルの太腿をヒットした。シェリフのタトルは出血が激しく、仲間はタトルがすでに死んだと判断し、襲撃を中断し、追跡団は援軍を求めることにしたのだった。

いずれにしろ、ジョーの銃弾に身をさらしてまでタトルを救出しようとはしなかったのだ。だが、タトルは一晩うち捨てられたが翌朝まで生きていた。

-つづく

 

 

第68回:ジョー・ウォーカー その2


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