街もまた
夜になると夢を見る
闇の中に気配を沈めて
夢幻の時の中にそっと佇む
そのとき街は
自らを構成していた無数の空間の
個々の主張を闇の中に溶かし込んで
ひとつになる
夜のしじまを破る鐘の音
塔の上から、広場を抜け、路地を渡り、やがて
しずかに夜空にすいこまれて街をおおう
吐息のような街の余韻、無言の囁き
そんな闇の揺籃ゆりかごのなかの明日
そうして積み重ねられてゆく昨日
夜の街の中では
人は誰もが生き急ぐ
あるいは生まれ変わろうとして
死に急ぐ
だが、この街の闇から抜け出ることなどできはしないと
誰かが言う、それでなくとも
この鐘の音から離れることは容易ではないと
誰に言われるまでもなく、誰もが想う
だからここでは夜になると
誰もがもう一つの人生を生きようとする
それが叶わぬまでもせめて
今夜だけはと誰もが想い生き急ぐ