■鏡の向こうのつづれ織り 〜谷口江里也のとっておきのクリエイティヴ時空
十二 夜の街の鐘 1/2
更新日2007/10/11
 




街もまた
夜になると夢を見る
闇の中に気配を沈めて
夢幻の時の中にそっと佇む

そのとき街は
自らを構成していた無数の空間の
個々の主張を闇の中に溶かし込んで
ひとつになる

夜のしじまを破る鐘の音
塔の上から、広場を抜け、路地を渡り、やがて
しずかに夜空にすいこまれて街をおおう
吐息のような街の余韻、無言の囁き

そんな闇の揺籃ゆりかごのなかの明日
そうして積み重ねられてゆく昨日
夜の街の中では
人は誰もが生き急ぐ
あるいは生まれ変わろうとして
死に急ぐ

だが、この街の闇から抜け出ることなどできはしないと
誰かが言う、それでなくとも
この鐘の音から離れることは容易ではないと
誰に言われるまでもなく、誰もが想う

だからここでは夜になると
誰もがもう一つの人生を生きようとする
それが叶わぬまでもせめて
今夜だけはと誰もが想い生き急ぐ






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