■鏡の向こうのつづれ織り 〜谷口江里也のとっておきのクリエイティヴ時空
八 豊饒の海のなかの生命いのち 2/2
更新日2007/08/09
 



これから失くすものを
鎮魂(わす)れるために……?
忘れようとして忘れられない感触と
再び触れ合うために……?
あるいは
とぎれとぎれの今を
明日の色に染めるために……?

物語を創る
自分のために

できたこととできなかったことの向こうに
言葉と幻影(イメージ)のパズルのように物語を創る

そんな企みとは無縁なところで
生命(うた)が生まれる
どこにもあるような森の中で
大気と光、土と水との……

木の実が熟れる
語り継がれた昔話よりも正確に形を得た
薄い表皮のなかの小さな深紅の海
そこに宿された時間(とき)
そこに息づく未来
あるいは、自然という名の
豊穣な浪費(いのち)

つくられた自覚(おぼえ)のない果実が
物語とは無縁なところで
生き誇ってただ
落ちるのを待つ




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