■鏡の向こうのつづれ織り 〜谷口江里也のとっておきのクリエイティヴ時空
二十二 もうひとつの命に 1/2
更新日2008/02/28
 




食べられればそれで良いともいえるのに
美しく飾り付けられたお菓子
それよりもさらに細かな手仕事が施された
食べられるためのものですらないお菓子の王冠

人は誰でも食べなければ死ぬ
けれど人は
ただ生きのびるためとしてではなく
幸いにも得ることができた糧を
より美味しく食べるために
それをより美味しそうにするために
つまりはそれを食べる人に
喜びを与えるために
その喜びを自分のものとするために
手間をかけ工夫を凝らし
思わずこぼれる笑顔を思い浮かべながら
お菓子や料理をつくる
喜びこそ
人が人として生きる証
そして美しさこそが
人の喜びにつながる秘訣

人は誰でも死を迎えるまでは生きていく
そして自分がいつどのようにして産まれたかを
誰も覚えてはいないように
死もまたいつどこで何の拍子に
訪れるかはわからない
不可視と不可視のあいだで
そうして人として生きていくかぎり
喜びは
できれば多いほうがいい
そして哀しみは
できれば少ないほうがいい
誰もが密かにそう願う
喜びはもしその気になりさえすれば
自らつくりだすことができなくはない
けれど哀しみは
それを避けるすべがない




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