第692回:日米テレビ事情を比較する
またまた去年と同じスキー場近くの町にアパートを借り、この冬をスキー三昧で過ごしています。こんな田舎町のアパートでも、大きなテレビ、そしてストリーミングというのでしょうか、大変な数の映画をいつでも観ることができることに驚いています。私たちの山小屋では、普通のテレビでさえ映りませんから、映画観放題、インターネットをいつでも使える環境に文化的ショックを受けています。でも、これが当たり前で、私たちの生活の方が浮世離れしているのでしょうね…。
ここでは日本のニュースさえ観ることができるのです。数時間遅れですが、そのまま日本語で放映されています。普段見慣れていないテレビを、最初はピッ、ピッ、カチャカチャとリモコンで盛んに切り替え、アメリカの4大チャネル、ABC、CBS、NBC、FOX、それにニュース専門のチャンネルのCNN、そして公共の報道PBS、加えてイギリスのBBCと、スペインのTVEなどを観ています。いやはや、こんな山の中の町にいて世界中の番組が観れる時代になっているのですね…といささか、世捨て人が50年経って、突然、文明社会の洗礼を受けたかのように、感嘆しています。
この場で、アメリカ極右の議事堂乱入とか、バイデン大統領の就任式のことを、長々と述べるつもりはありませんので、ご安心ください。
日本とアメリカ、ヨーロッパのテレビのあり方というのでしょうか、報道の仕方が随分と違うことに気がつきました。なにも報道論を広げるわけではありませんが、日本では女性アナウサーは一種のセレブレティー・タレントなのでしょう、皆が皆、申し合わせたように細身の美形で、しかも若いのです。服装、化粧も清楚で、すぐにテレビドラマに使えそうなのです。
これがアメリカのテレビのニュースキャスターやホストですと、いったいどこに本当の顔が隠れているのか判然としないくらい、デビ夫人も顔負けのとんでもない厚化粧をしていたり、まったく洗いざらしで、化粧ゼロだったりします。そしてファッションも、個性的といえば聞こえは良いですが、ド派手な服装で、真冬の報道に、肩だけでなく、胸も思いっきり強調し、胸元もザックリと割れたセクシールックで登場する女性もいれば、アンタもう少しシャレた方が良いんじゃないのと言いたくなるような、トレーナーに毛が生えたシャツで平気で登場したりします。まあ、アナウンサー、ニュースキャスター個々の持ち味を出し、服装や化粧より報道能力、話す力の方に重きを置いているとも言えます。
日本ではNHKをはじめとして、他の局でもディレクターが指導しているのでしょうか、アナウンサー心得、マニュアルで規定しているのでしょうか、髪の毛は黒、染め金髪、茶髪はダメ、アクセサリーも目立たない程度にさりげなく…というのが基本のように見えます。ところが、西欧のニュースキャスター、ホストは、マー、あきれるくらいゴチャゴチャと首飾りを3重、5重にし、キンキラのイヤリング、腕輪をしている人が多いのです。逆に一切何もつけていないキャスターも結構いるのですが…。そんなことは、個々人が自分で決めることだとしているのでしょうね。テレビを観る側にとって、確かにミテクレ、外見は一つの大切な要素であることは認めますが、内容が伴わなければ意味がありません。
もう一つ極端に日米で異なるのは、朝、昼、晩のニュース番組に出演する人種です。アメリカのそのような番組では(日本もほとんど同じですが)、司会というのかキャスターが男女一人ずつ、それに気象予報士さん、スポーツ担当の人で、他に現場に行っているレポーターの構成ですが、アメリカでは必ず黒人かスパニッシュと呼ばれているラテン系、もしくはアジア系の人が混じっていることです。
彼らは、当然のことですが、きちんとした英語を話します。すべてのテレビ局は意図的に黒人、ラテン系、アジア系の人たちを表に出し、ウチの局では人種偏見のない報道をしているよと宣言しているのかもしれません。そこで、デブにも権利があるとばかり、超デブのアナウサー、キャスターを使っている局も珍しくありません。日本ではテレビ局で体重制限を設けているのでないかと疑いたくなるほど、デブのキャスター、アナウサーが見当たりません。太りすぎて日本のテレビに出られない方々、是非アメリカに来てください。
人種も体型も性別も自由なら、年齢もアメリカではバラエティーに富んでいます。逆に老齢のアナウサー、キャスターが尊敬され、大切にされています。先週(01/23/2021)、ラリー・キングが87歳で亡くなりましたが、彼のように70歳、80歳になっても活躍していたキャスターが結構います。PBSのジュディー・ウードロフはこの道50年の大ベテランで、74歳になりますが、未だにアンカーとして活躍しています。お年寄りを大切にする伝統のある日本ですが、本当に老人のことを考えるなら、もっと活躍の場を与え、コキ使うことです。それに、そんな老人の経験、人脈をもっと生かすべきだと思います。
西欧、特にアメリカのテレビに出演している人たちに共通しているのは、男女、人種、デブやせっぽち、老若にかかわらず、皆が皆、まるで真っ白に磨き上げられたトイレのタイルのような綺麗な歯を持っていることです。味噌っ歯、乱杭歯の人はテレビに出られないどころか、市民権がない…と言わんばかりです。
もう一つ日本と西欧のニュース番組の大きな違いは、日本のニュース番組では、あれはキャスターではなく、単なる“ニュースリーダー”と呼ぶべきで、エライさんかディレクターが書いたニュースを内容が分からないまま読み上げているだけで、自分の言葉で話していないことです。テレビカメラの脇にあるスクリーンを必死になって見つめ、読んでいるのでしょうね。あれは、哀れな役割です。
一般に、西欧では自分の言葉で自己表現できない人間は、“アホ” “馬鹿”とみなされます。誰ですか、アホ、馬鹿でも可愛いければそれで良いなんて言う人は…。
-…つづく
第693回:引退後の生活の極意は?
|