■挨拶は「もうごはん食べた?」 〜バンコク街角通信

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。


第1回:挨拶は「もうごはん食べた?」
第2回:果物で知る季節
第3回:懐かしきふるさとの味
―ソムタム―

第4回:インスタント麺のサラダ
―ヤム・マーマー―

第5回:タイ風洋食?
―パット・マカロニー―

第6回:ほかほかご飯に卵焼き
―カイ・ヂヨウ―

第7回:タイといえばやっぱり?
―トムヤムクン―

第8回:記憶の中の混ぜご飯
―カーオ・クルック・カピ―

第9回:ピンクのスープの海鮮麺
―クエッティアオ・イェンターフォー ―

第10回:蟹を食べるときゃ
―プー・パッ・ポン・カリー―

第11回:川魚をおいしく
―プラチョン・ヤーン・グルア―

第12回:家族団欒のひととき
―ムー・ガタ―




■連載完了コラム
■My Bangkok Life
〜暮らしてわかったマイペンライの国
 
[全29回]


■更新予定日:隔週木曜日

第13回:黒くてつるん ―チャオクワイ―

更新日2003/12/18


わたしは昔からゼリーの類が大好きだ。こんにゃくゼリーなんていうのはその代表格。ぶるん、と力強い弾力の歯応えがあり、それからつるんと喉元を過ぎていく。ただ冷やして食べるだけではなくて、冷凍庫に入れて少し凍らせてから食べるのもオツなものだ。スプーンでシャーベットのようにすくって食べる。小さなしあわせを感じるひとときでもある。


チャオクワイ(仙草ゼリー)

バンコクでは道端で、この手の小さなしあわせに遭遇することができる。チャオクワイ屋台、である。見た目はコーヒーゼリーよりも濁った黒さで、香港なんかで食べられる亀ゼリーを思い浮かべて頂くとちょうどいいかもしれない。

ほうろうの器に入れて固めたチャオクワイを、さいの目に切って、澄んだシロップをかけて、クラッシュアイスを乗せればでき上がり。チャオクワイ自体には何の味付けもされていない。ほのかに感じる薬草のような風味といえばよいのだろうか、そんな味がするだけである。

このチャオクワイ、日本語では仙草ゼリーと呼ばれる。その原材料を目にする機会が未だにないのだが、仙草は葉が多く茎が細い植物らしい。これを乾燥させたものを煮煎じていくと黒い汁になり、それをでんぷんで固めたものがチャオクワイである。葉を煮煎じるときに量をケチると、黒い色だけついて風味がまったく感じられないのだとか。食べると仙人になるといわれのある草だけあって、体の中の熱を取ったり、めまいを防ぐ効果がある。

バンコクでこの小さなしあわせが密かに大流行している場所がある。チャトゥチャックマーケット(ウィークエンドマーケット)だ。ここ数年で、観葉植物を売るゾーンに小洒落た雑貨の店が並ぶようになったのだが、その一角にある白いのれんの店がこのブームの火付け役だ。そこではチャオクワイ・ボラーン(元祖チャオクワイの意)と名づけ、シロップの代わりに赤砂糖をかけて食べさせる。クラッシュアイスを乗せた瞬間の赤砂糖はまだ粒々しているのだが、氷が溶けてくると自然にシロップができ上がる。赤砂糖には漂白された砂糖にない、柔らかい香りと風味が感じられる。

小さな店内はいつも満員で、あふれたお客は店の前の通路の思い思いの場所で、ベンチに腰掛けたり、あるいは立ったままこのチャオクワイを食べている。このヒットに目をつけたのか、その後、マーケットの各ゾーンのジュースや飲料水を売る店でもこのチャオクワイを売り始めた。しかも赤砂糖をかけるボラーンスタイルまでおんなじだ。

個人的にはマーケットのどこを歩き回ってもチャオクワイが食べられるのでありがたいのだが、作り手の腕がいまいちだとチャオクワイの歯ざわりがごりっとしている。やはりチャオクワイは、ぷるん、つるんでないと。と言いながら、今日もデザートにこの黒いゼリーを探す毎日である。

 

 

第14回:南国で囲む鍋料理―タイスキ―


 
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