■挨拶は「もうごはん食べた?」 〜バンコク街角通信

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。


第1回:挨拶は「もうごはん食べた?」



■連載完了コラム
■My Bangkok Life
〜暮らしてわかったマイペンライの国
 
[全29回]


■更新予定日:隔週木曜日

第2回:果物で知る季節

更新日2003/07/17


四季の変化に富んだ日本からやってくると、タイの季節の移り変わりはなんとも平坦なものに感じられる。実際には、めちゃくちゃ暑くて雨が降らない暑季、1日1回以上のどしゃ降りのスコールがお約束の雨季、爽やかに涼しく雨が降らない寒季と3つの季節があるのだが、それがわかるようになるには最低1年の期間を要する。つまり、すべての季節を体感するということだ。

しかし、自然に囲まれた環境に暮らせばこの限りではないかもしれない。咲き乱れる花や植物、虫や動物たちが季節の変わり目をそっと知らせてくれるのかもしれない。だが、残念なことに、首都バンコクは恐ろしく緑が少ない。街路樹の変化を見つけることさえ難しい。

そんな都会暮らしのバンコクの人々に季節の変わり目を明確に告げるもの……、それは“果物”なのである。一般的に果物といっても、年中売られているものもある。パイナップルやスイカ、パパイヤ、バナナといった比較的安価なものがそれだ。だが、ここでいう果物とは、特定の季節にしかお目にかかれない、少し希少価値のあるものを指す。暑季でいうなら、ドリアン、そしてマンゴー。雨季でいうなら、ランブータンにマンゴスチンというところだろうか。

「王様ドリアン」
果物の王様と呼ばれるドリアン。腐臭にも似た独特の匂いと、ねっとりとした舌触りを持つ果肉に腰が引けてしまう人も多い。だが一度その味の虜になってしまうと、もうドリアンの季節が待ち遠しくて仕方ない。そんな不思議な魅力を持つ果物なのである。

ドリアンの果肉は熟するにつれて柔らかくなり、匂いが濃厚になってゆく。タイの人でも、この匂いを敬遠して少し固めのものを選ぶ人もいる。個人的には、果肉が柔らかめの方がドリアン本来のおいしさを味わえると思う。果肉の色が少し透き通った濃い目の黄色なら、それは当たりの確率が高い。モントーンという品種ならなおよい。

だが、スーパーでパックに入ったドリアンを指でぐにゅっと押して確かめるのはルール違反。ぱっと見て固さが判断できるようになったら、ドリアン選びのプロといってもいいかもしれない。

「マンゴー×もち米=カオニャオ・マンムアン」
わたしが日本で口にしていたマンゴーは、フィリピン産のものばかりだった。品種によるのかもしれないが、タイのマンゴーの方がはるかに大ぶりで甘みが強い気がする。包丁を入れると果汁が滴るような完熟マンゴーは、そのまま食べてももちろんおいしいが、タイの人はこうやって食べるのが好きだ。


カオニャオ・マンムアン(もち米添えマンゴー)

ココナッツミルクと砂糖を加えて蒸したもち米に、マンゴーのスライスを乗せて、その上に塩味の効いたココナッツミルクをかければ、“カオニャオ(もち米)・マンムアン(マンゴー)”と呼ばれるお菓子のできあがり。この時期の青果市場では、気を利かせてマンゴーと一緒に甘いもち米まで売っている。マンゴーの芳香に、ココナッツミルクの優しい風味が調和する南国らしいデザートはくせになるおいしさだが、食べ過ぎると翌日には体の変化がわかるほど高カロリーなのでご注意のほどを。

「学校のランブータン」
ランブータンは雨季にしか見かけないのに、値段はそれほど高くない。1キロが20バーツ(約60円)というのが標準的な相場だ。旬真っ盛りになると、荷台にランブータンが山盛りになったトラックを見かけたりする。畑からそのままバンコクへやって来ましたという感じだ。そして拡声器で、
「2キロで15バーツ、3キロなら20バーツだよ〜!」
と大声を張り上げると、近所のおばちゃんや若いお姉ちゃんがどこからともなく集まってきて、ランブータンの品定めが始まる。

ランブータンは外皮のひげに張りがあって、黒ずんでいないものが新鮮な証拠。市場で売られている品種は“ロンリエン(学校)”というのが一番多い。この言葉が品種を指すとはつゆ知らず、「学校で採れるランブータンなのかな」と長いこと疑問に思っていたが、この品種が生まれた南部スラータニー県の地名でそういう場所があるのだとわかった。

甘くてみずみずしい果肉は外国人にも食べやすいが、中心にある種の表皮がはがれて実にくっついてくると、おいしさが半減するような気がするのはわたしだけだろうか。

「女王マンゴスチン」
わたしが一番好きなのがこのマンゴスチン。甘みの中に微妙な酸味があり、果肉は真っ白で桃のような舌触りがするのがおいしいマンゴスチンである。これがハズレになると、果肉が傷んで部分的に茶色くなっていたり、半透明でごりごりとした舌触りだったりする。


マンゴスチン

だが、マンゴスチンの当たりはずれは、外からは見分けがつかないのだから厄介だ。外皮が薄汚れた感じでも中の果肉は真っ白だったり、外皮が無傷で光沢があっても中身がごりごりだったりする場合もある。

選ぶときに注意しなくてはいけないのは、外皮は爪の先がくい込む柔らかさであるか、実は大き過ぎないかということである。外皮が爪がくい込まないほど固ければその実は古いということになり、大き過ぎる実は当然種も大きい。

タイの人は市場でマンゴスチンを買うときに、実を手に取った瞬間にそっと外皮を指で押して柔らかさを確かめている。ただ、1キロ買っても可食部分は半分にも満たないというのがマンゴスチンの泣きどころである。

 

 

第3回:懐かしきふるさとの味―ソムタム―

 
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