■挨拶は「もうごはん食べた?」 〜バンコク街角通信

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。


第1回:挨拶は「もうごはん食べた?」
第2回:果物で知る季節
第3回:懐かしきふるさとの味
―ソムタム―

第4回:インスタント麺のサラダ
―ヤム・マーマー―

第5回:タイ風洋食?
―パット・マカロニー―

第6回:ほかほかご飯に卵焼き
―カイ・ヂヨウ―

第7回:タイといえばやっぱり?
―トムヤムクン―

第8回:記憶の中の混ぜご飯
―カーオ・クルック・カピ―

第9回:ピンクのスープの海鮮麺
―クエッティアオ・イェンターフォー ―

第10回:蟹を食べるときゃ
―プー・パッ・ポン・カリー―

第11回:川魚をおいしく
―プラチョン・ヤーン・グルア―

第12回:家族団欒のひととき
―ムー・ガタ―

第13回:黒くてつるん
―チャオクワイ―

第14回:南国で囲む鍋料理
―タイスキ―

第15回:バンコクで日本の味
―焼きそばに餃子―



■連載完了コラム
■My Bangkok Life
〜暮らしてわかったマイペンライの国
 
[全29回]


■更新予定日:隔週木曜日

第16回:バンコク屋台紀行1―深夜のカオトム―

更新日2004/02/12


バンコクのナイトスポットの閉店は深夜2時。以前はその時刻を過ぎても、お客の入り具合に応じて閉店時刻を延長している店が多かったが、最近は警察の取り締まりが厳しくなったせいか、午前2時にぴたりと音楽が鳴り止み、客はぞろぞろと店の外に出なくてはいけなくなった。

外に出て、昼間の熱気の残った空気を吸い込むと、ふと自分が空腹なのに気づくことがある。さて、どこかで何か食べようか……。心配ご無用、バンコクの街にはこんな深夜でもちゃんと開いている屋台がある。

カオトムと呼ばれる白粥を中心に、それに合いそうな少し味の濃いお菜を出す屋台がそれだ。しかし、この屋台、別に深夜に限って営業しているのではない。普通は夕刻、皆が夕食を取る時間帯から開店している。だが、閉店時間は遅い。深夜2時のところもあれば、4時のところもある。作る側にしてみれば大変な話だが、食べる側にしてみれば、そんな時間でもちゃんと料理を作って出してくれる店があることは非常にありがたい。

そこでは、こんなお菜が出されている。

大根と高菜、それに豚肉を中国醤油で煮込んだヂャプ・チャーイ。豚肉の脂とだしが大根に染みていて、高菜もくたくたに柔らかくなっている。まさに、お惣菜といった感じの煮物だ。

あひるの卵を殻ごと塩水に漬け込んで作るカイ・ケム(塩卵)というものがある。これは相当塩味が強い。このカイ・デーン(黄身部分)と、玉ねぎ、ナムプラー、唐辛子、ライム、パクチーを入れて酸っぱ辛く和えれば、ヤム・カイデーンのでき上がり。


ヤム・カイデーン(塩漬け卵の和えもの)

プラー・ケムは、塩漬けした魚。それを大胆に輪切りにして、油で揚げたものに、玉ねぎ、唐辛子、パクチーを乗せて、ライムを絞って身をほぐしながら食べる。これもほんのひとかけらの身で、お粥が半杯くらい食べられそうなほど塩辛い。

キー・マオ(酔っぱらい)と呼ばれる味付けは、材料を変えるだけでいくつもの料理が生み出せる万能選手。烏賊を炒めて、にんにく、唐辛子、ナンプラー、オイスターソースなどで、辛く濃く味をつける。ご飯のお菜にもいいけれど、酒の肴にもなりそうな一品だ。

これらのお菜に、味つけがまったくされていないお粥を合わせて食べる。インディカ米で作ったお粥はどんなに時間が経ってもさらりとしていて、すっと胃の中に収まってくれる。

深夜にこの屋台を訪れるお客さんは、仕事帰りの水商売のお姉さんだったり、クラブやキャバレーのバンドメンバーだったり、夜遊び帰りの若者のグループだったりする。彼らは、それぞれにお粥で満たされたお腹を抱え、東の空が薄明るくなる頃に眠りにつく。そして、またバンコクに新しい朝がやってくる。

 

 

第17回:バンコク屋台紀行2―道端のアイスミルクティー―


 
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