たった一週間の恋。
そのために真っ暗な土の中で何年もの時を過ごす。
穴ゼミの姿で夜明け前に土の中から這い出して
殻を割って、朝の淡い光を受けてセミへと変身する。
殻から抜け出たばかりの
まだ薄暗い中での透明な青白い姿は
あれは、誰のための美しさ……?
目も眩むような、夏の強い日差しが満ちる頃には、もう
あたり一帯に響けよと、全身を打ち震わせて歌を謳う。
たった一週間の、もしかしたら、もっと短いかもしれない
熱い熱い、恋の季節。
真っ暗な数年を過ごした後の光の海の中の恋。
あの強い歌声は、きっとセミにしかわからない歓喜の証。
一瞬の恋を生きるために生きるセミの至福。