■貿易風の吹く島から〜カリブ海のヨットマンからの電子メール

佐野草介
(さの・そうすけ)


道産子。小学生の時、フランス人4人がヨットで世界1周する記録映画を見て、人生の針路を決定する。水上生活者として20余年。前半は地中海、後半はおもに大西洋とカリブ海で暮らす。現在はカリブの砂州、カージョ・オビスボにヨットを舫い棲家とする。



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Caribbean Sea Map


Puerto Rico Map

■更新予定日:毎週木曜日

第91回:ヴィエキス島 その1

更新日2003/05/15


この2、3年私たちが週末を好んで過ごすのは、ヴィエキス島の西のある投錨地グリーン・キイ、別名サンディ・キイだ。

10年前にはパロミーノ島へよく出かけたが、大型リゾートがその島をリースし、本土にあるホテルからピストン輸送で観光客を送り込み出したので避けるようになり、シマを変え、イカコス島が私たちのお気に入りの投錨地になった。

イカコス島は、カリブ海が大西洋と出会いプエルトリコ本土の東岸をすり抜けるように潮が流れ出るところに位置する。潮流のキツさを我慢しさえすれば、ダイビングにはもってこいのアンカレジ(投錨地)だ。浅く広がったリーフもきれいだし、魚が豊富で私のスペアフィシングの漁場だった。

ここで、超大型のマンタレイ、スティングレイ、2メートルクラスのバラクーダを見ることは珍しくないし、海の穏やかな島の南側へ回ると、海亀やマナティを目にすることもしばしばだった。

しかしながら、ここにもシュノーケル客を満載した大型カタマランが大挙して訪れるようになり、魚より白くふやけたシュノーケル観光客の方が多くなってきたのだ。2度潮に流され大西洋へ持っていかれそうになったマナティクラスのウルトラデブを救助し、今一度はしがみ付かれ、あやうくこちらも道連れにされるところだった。

海水浴場の監視員になったような義務感がつきまとい、自然と私たちの足も遠のいた。 

ヴィエキス島のグリーン・キイは、イスレタから16マイル南にあり、普通のヨットで2、3時間の距離である。何よりいいのは、東からの貿易風を受けてビーム(横風)でセーリングできることだ。ビームでヨットを走らせるほど快適なことはない。一番スピードが出るし、舵が安定し、セールの開く角度を調節してバランスを取ると、舵に全く触らずに何時間でもヨットを走らせることができるのだ。

グリーン・キイにアプローチする際、島の北西からプエルトリコ本土に1.5メートルから2メートルの深さの浅いサンドバンクが足のように伸びているのをキールを擦らずに通り越しさえすれば、ヴィエキス島のカゲに入り、静かな海面を楽しむことができるのだ。

グリーン・キイは6キロにおよぶ砂浜で、その背後には椰子の林がそよいでいる。理想的な投錨地だが、東風が吹いている限りはという条件が付く。

年に何度か前線が貿易風に勝って西風が吹くことがある。西にさえぎるものが何もないので、大きなうねりが入り、夜中に錨を上げ、ほうほうの体でマリーナに帰り着いた冒険談はよく耳にするところだ。

グリーン・キイのよさは、その大きく開けているところにある。訪れるヨットの数も少ないが、一直線に伸びた砂の海岸沿いのどこにアンカーを入れてもよいので、窮屈な感じがしないのだ。20隻停泊していてもパラパラと散らばっている感じなのだ。おまけに夜を過ごすヨットはさらに少なく、週末でも5、6隻だろうか。突然吹いた恐怖の西風の話が蔓延しているおかげである。

今、ログブック(航海日記)を見ると、私たちは30回以上夜を過ごしているが、もちろん恐怖の西風に出会ったことはない。万が一のため、一応逃げるコースを決めてはいるのだが…。

構築物のない、絵に描いたような海岸に人気(ヒトケ)がないのは、グリーン・キイの一帯がアメリカ海軍の所有地になっているからだ。一般人は上陸できないことになっているし、剥げた文字で「立ち入り禁止」のたて看板があることはある。しかしここではそんなルールを守る人はいない。皆、自由にヨットからディンギィーで、または泳いで海岸へ渡り、長い砂浜の散歩を楽しんでいる。

この南海の眠ったようなヴィエキス島が、プエルトリコをゆるがし始めている。

 

 

第92回:ヴィエキス島 その2

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